梅栽培の四季
毎年2月頃は田辺市から南部川村にかけて見渡す限りの丘陵地帯が白い梅の花で覆われます。
日本の代表的な梅「南高梅」(なんこううめ)を育てる梅農家の1年は、梅の開花とともに始まります。
2月中旬の梅林は観梅に訪れる人々にとっては、やさしく楽しい風景ですが、梅農家にとっては、その年の収穫量が決定する大切な時期でもあるのです。この梅の花の開花時期の主役は農家の人たちではありません。梅畑のあちこちに置かれた蜂箱へ蜜を運ぶミツバチ達です。
このミツバチが蜜を求め花から花へ飛び回りながら受粉を行いますが、蜂が飛んでくれる条件は難しく天候・温度・風などに左右されることから、開花時期の自然環境がその年の受粉の割合を決定することにもなります。
気候もすっかり春らしくなり、可憐な梅の花が散った後には、ミツバチの働きによって受粉した小さな梅の実がぶら下がっています。
3〜5月にかけ、だんだんと暖かくなる日差しを浴びながら、梅の実も日1日と大きく成長していきます。
この頃になると収穫に備えての準備が始まります。作業をやり易くするための梅畑の下草刈や果肉の多い大きな実が育つように肥料が撒かれます。
6月頃になると梅の実も大きく育ち、たくさんの実がついた枝は、その重さで垂れ下がるようになります。そして、梅の実にも南高梅独特の紅がさすようになる頃、いよいよ待ちに待った収穫の時がやって来ます。
この時期に収穫される梅は青梅のまま消費地へ送られ梅酒などに利用されるもので、枝になっている状態を一粒づつ手作業で収穫します。この青梅取りは、はしごなどを使った高所での作業が多く重労働ですが、傷をつけないよう丁寧に一粒一粒、手もぎしていきます。
収穫した青梅は、農家に持ち帰り品質検査をしながらサイズ別に分けられ、箱詰めされて農協の集荷場へ集められます。さらにここでサイズ、品質などの厳重な検査が行われ、日本一の梅「南高梅」にふさわしいと認証されたのち、最高品質として全国各地へ出荷されます。
梅干作り
6月中旬から下旬に掛けて、南紀の山々が梅雨の雨雲で覆われる頃、梅干用の落ち梅の収穫は最盛期を迎えます。
梅干作りに最適な梅は、よく熟して枝から落ちた完熟の梅で、果肉が厚く柔らかく皮が薄いという南高梅の特徴を生かせる状態で収穫され、南部川村では採れる梅の6割が梅干に漬けられます。
青梅として出荷する梅は平坦地での栽培が多く比較的収穫作業も簡単ですが、落ち梅の収穫は山腹の斜面にネットを張り落ちてきた梅を集めるのですが、雨が続く梅雨のさなか滑りやすい傾斜地での作業は体力を要する大変な仕事です。
収穫して農家に持ち帰られた完熟梅は、流水できれいに洗浄され品質検査の後、サイズ別に分けられ、それぞれのサイズの漬槽に漬け込まれます。漬槽の中には完熟梅と塩が交互に入れられ、いっぱいになるとフタを乗せて重しをして1ヶ月以上寝かせます。やがて梅の実から梅酢があふれ出し、美味しい梅干が漬けあがります。
7月中旬の梅雨明けとともに始まるのが土用干しの作業です。漬槽から出した梅干を水洗いした後、一粒づつ重ならないようにせいろに並べ、3〜5日程度天日に干します。
土用干し中は、梅干をまんべんなく乾かすために裏返す作業が必要です。また、途中で雨が降れば、せいろを取り入れるなどの作業が必要となることから、現在ではビニールハウスの中で土用干しをすることが多くなっています。
土用干しの終わった梅干しは品質検査をして等級ごとに分けられて樽詰された後、保存あるいは加工工場へと送られます。
加工工場では味の調整などの二次加工、あるいはカップ詰めが行われ全国の消費者の元へ届けられます。粒が大きいだけでなく果肉が多く皮も柔らかな南高梅の梅干は、日本一の梅干として多くのファンに親しまれています。
※上記文章は、南部川村うめ振興館常設展示図録を参考及び引用させていただきました。
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