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熊楠による長男熊弥居室スケッチ(1924年)

[Photo: Drawing of Kumaya's room]

 写真:熊楠がスケッチした長男熊弥の居室図(大正14年日記巻末住所録ページに書き入れられたもの)

 熊楠が生涯つけ続けた日記(明治14年と、明治16年から昭和16年までの計60冊が、南方熊楠邸・顕彰館と南方熊楠記念館に保存されている)には、その日の出来事や仕事の他、書簡発受信から動植物の見せる季節変動まで、実にさまざまな情報が綿密に書き入れられている。その情報はしばしば当該日の一ページには収まらず、巻末附録のページ(住所録、金銭出納帳や備忘録のためのもの)にも、読書書き抜きや聞き書きの記録から生物観察図にいたるさまざまな書き入れがなされたものが多い。

 ここに掲載したのは、大正14年日記巻末の余白に書き入れられた室内スケッチ図で、図の中央左よりに「熊弥常 [に] すはり居りし二階の室」と記されている(その周囲の書き付けは、文献調査メモ)。南方邸母屋二階、南向きの部屋の図と思われる。机上には、各種文具の他、カメの置物のようなものも見える

 熊楠の長男熊弥は、この年の3月、旧制高校受験のため訪れていた高知市で発作(統合失調症とされている)を起こして直ちに帰宅、一時和歌浦病院に入院するが、5月以降自宅療養にはいった。その後、昭和3年に京都の病院へ入院するまでの間、熊楠は熊弥と起居を共にし、日記にその様子を克明に記録している。最愛の長男が健康だった日々、机の周りに図書を積み上げて使用していた居室のさまを日記に描き留めた父熊楠の胸中は、察するに余りある。(田村義也)

参考:南方熊弥(みなかた くまや)1907-1960『南方熊楠を知る事典』から)

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