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田辺−水上−妹尾−高野菌類紀行

目次

前言

 2003年10月19-20日の二日間にわたり、当研究会有志によって、南方熊楠の菌類観察・採集の足跡を田辺−水上−妹尾−高野とたどる菌類及び生態観察の実地調査が行われました。これは、国立科学博物館植物研究部に寄贈された南方熊楠菌類図譜のディジタルデータベース化を推進している科学研究費プロジェクトチームと、熊楠の生物研究の軌跡を追っている当研究会有志とによって企画されたものです。ちょうど10月18日に行われた「南方熊楠研究所(仮称)設計公開最終審査会」傍聴のため、複数の研究会会員が田辺市を訪れることになっていたこともあり、普段はなかなか集まれない顔ぶれがそろうこの機会に、日程上の困難を押して、生物学者南方熊楠の屋外調査の実際について理解を深めるためのフィールドワークを行うことになりました。

 未刊行自筆資料を調査している熊楠専門家から菌類分類学者まで、多岐な分野の研究者が一同に会しての野外調査は、期待をはるかに越えて学ぶところの多いものとなりました。以下数ページにわたって、この調査旅行の様子と成果を「写真紀行」の形でご報告します。

南方熊楠記念館訪問

白浜 2003.10.18

 南紀及び高野における菌類の実地調査に先立ち、前日に田辺入りした熊楠菌類図譜チームの一行(萩原博光、岩崎仁、田中伸也)は、まず白浜町の南方熊楠記念館を訪問しました。

[Photo: Hagiwara & Iwasaki in front of Kinenkan] [Photo: People of Kinenkan]

[左] 9:30。朝一番から南方熊楠記念館。ここまではスケジュール通り。〔写真:後ろ手の岩崎と鞄を提げた萩原。買い物カバンの如きこのトートバッグの秘密は、次の日に明らかとなる。〕

[右] 12:00。記念館は終始和やかな雰囲気でした。萩原先生(しゃがんで観察中)と和田稲吉様(館長:後)、井谷力様(事務長:前)。記念館は展示内容も豊富だったのですが、応接室でのお話がはずみ、この時点ですでに時間オーバー。時計のサインを連発してなんとか出発。井谷様が記念館周辺の粘菌らしきものについて萩原先生にお尋ねしたいということで全員で粘菌を探しながら周辺を散策、予定を完全に過ぎて昼ごはんを食べる時間がなくなってしまいました。

Photo & texts: Tanaka Nobuya

南方熊楠研究所(仮称)設計最終審査会

田辺 2003.10.18

 この日午後、田辺市青少年研修センターを会場として、田辺市が計画している南方熊楠研究所の設計コンペの最終審査が一般公開の形で行われました。一次審査を経て最終候補となった5チームによる提案のプレゼンテーションと質疑応答を経て、審査委員六氏(建築の専門家三氏、熊楠研究者一名、地元の南方熊楠邸保存顕彰会理事一名、及び田辺市助役)が審議を行い、議決するという過程のすべてを公開で行いました。これはちょっと、あまり例のないことではないでしょうか。

[Photo: Audience in the floor]

開会前、会場を埋めた聴衆。県外からの参加者が大半だったそうです。

[Photo: Nagai san] [Photo: the Mayor]

開会を告げる司会者(左)と挨拶を述べる田辺市長(右)。

[Photo: Members of committee]

衆人環視の中、激しく議論を闘わせる審査委員六氏。その度量には敬服の至りです。

[Photo: candidates]

 審査が公開で進められるのを傍聴する五チームの提案者諸氏。個性のはっきりした、魅力的な提案がそろっていたと思います。でもここ田辺は、日射は強いし嵐も来るし虫もカビもエライんですよ…。

 結果は、田辺市教育委員会文化振興課のサイト内で発表されています。

[Link] 南方熊楠研究所(仮称)設計提案競技最終審査結果

[Link] 南方熊楠研究所(仮称)設計提案競技の一次審査結果 * 決定案を含めた最終候補五点と佳作五点の図面が公開されています。

Photo & texts: Tamura Yoshiya


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