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◆湯山(ゆやま)



※ この地図は、大日本帝国陸地測量部発行の1/50,000地形図「井川」(明治44.4)を使用したものである

所在:川根本町千頭(せんず)
地形図:寸又峡温泉/井川
形態:山中に家屋が散在する
標高:約710〜約810m
訪問:2007年5月・2020年11月

 

 寸又峡(すまたきょう)温泉の温泉街(大間(おおま)地区)より奥、湯山沢付近にある。前黒法師(まえくろぼうし)岳の登山道沿い。
 町史によると、離村直前で大村家4戸・滝浪家2戸・安竹家・望月家各1戸の計8戸。それぞれ千頭の千頭西(せんずにし)・寺野(てらの)・大間・中川根町の小井平(こいだいら)(以上大村家)・千頭東(せんずひがし)(滝浪家・安竹家)・寺野(望月家)に移転。最初の転出は大村家の昭和20年であった。また元禄16(1703)年の検地帳では、2戸の屋敷があったことが分かる。
 大村氏の聞き取りでは、ワサビ栽培や
国有林での労働などを生業とし、焼畑では稗・粟・蕎麦・黍・里芋・馬鈴薯などを栽培していたという。
 また集落奥の湯山温泉は、明治22年5月開発。同31年、湯山8戸の共有による温泉利用の宿舎が建てられた。温泉はダム建設の補償費に代わって一時消滅したが、望月氏により昭和32年に再度湧出、同37年に源泉から下流の大間まで引湯管を敷設。なお「湯山」という地名は温泉湧出にちなむ。

 集落跡は平坦地に乏しく、傾斜地に僅かな平地を作った民家や耕地の跡がある。登山道の途中に「湯山集落跡」の案内板(写真3)が立っているので分かりやすい。

 2020年再訪。前回訪れた登山道沿いから足を延ばし、やや西に離れた場所で屋敷跡を1箇所(写真22-24)、湯山沢右岸側でも屋敷跡をもう1箇所(写真28・29)新たに確認した。沢には段々になった石垣が築かれている場所があり、これは先述のワサビ栽培の跡地と思われる(写真26)。
 源泉の付近には浴槽のような構造物を備えた遺構があるが、先述の集落共有の浴場跡だろうか(写真32)。また石垣が築かれた平坦地もあり(写真34・35)、先述の宿舎であった可能性がある。最近の地形図ではこの上流部にも建物が記されているが、これは林業の飯場。
 なお町史の本文中には温泉宿があったことを窺わせる文章があるが(※)、それらしい場所は断定できなかった。
 さらに地名を冠した湯山発電所(写真39)にも足を延ばした。旧版地形図では、この付近に橋が架かり東側地区に向かう道が通じている。

※ 以下にその記述を挙げる
・「湯山には、湯山の人々が祀る不動尊があった。ところが、その不動尊が温泉宿の下手に当たるようになったので(略)温泉の上手に遷座した」
・「大間の子ども達は三年生以上になると七夕・盆などに菓子やスモモを持って湯山の温泉に出かけた」
尾崎の旧住民夫婦(夫・明治41年生、妻・同44年生。昭和23年転出)への聞き取りで、「子供の頃(大正七年ごろ)(略)日帰りで湯山の温泉へ行ったことがあった。湯山には旅館があった」とある
 また湯山の望月氏は温泉宿「翠紅苑」を創業しているが、創業時の位置は不明。大正期、「温泉宿は山を背に、渓を前にした杉皮葺きの二階建て」「建物は七間に五間で二階に六部屋あり、二〇人は泊まることができた」とある

 


写真1 石垣
(以下2007年撮影)


写真2 ミシン?


写真3 「湯山集落跡」の看板

写真4


写真5 林道の登山案内板より。「湯山集落跡」と見える
(以下2020年撮影)


写真6 集落への登り口(登山道)

写真7 集落下の炭焼き窯跡

写真8 屋敷跡

写真9 石垣

写真10 屋敷跡の石垣(写真1と同じもの)

写真11 屋敷跡の石垣

写真12 写真10・11の屋敷跡

写真13 「湯山集落跡」の看板(写真3と同じもの)

写真14 屋敷跡?

写真15

写真16 農地跡?の石垣

写真17 写真16にて

写真18 壜。「守山牛乳」とある

写真19

写真20 何かの跡

写真21 屋敷跡

写真22 屋敷跡

写真23 写真22外縁の木立

写真24 写真22の石垣

写真25 湯山沢

写真26 湯山沢の石垣。ワサビ田跡?

写真27 湯山沢の橋の跡

写真28 湯山沢右岸の屋敷跡

写真29 写真27の小屋

写真30 林道の湯山沢橋

写真31 源泉設備

写真32 浴室? 源泉のすぐ下方

写真33 小祠。源泉のすぐ上方

写真34 源泉近くの石垣

写真35 写真34の平坦地(宿舎跡?)

写真36 飯場

写真37 写真36にて

写真38 写真35手前の平坦地

(写真39 湯山発電所)

 

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