TOSS-TWO-WAY/小学校/音楽/けんばんハーモニカ/1年生
                         紀州教育サークル 寺上 円女

(5)けんばんハーモニカ3つのポイント

              岡 田 恵 美 子(教育技術の法則化 第2期〈14〉 P.90-P.92/1986)

 一年生の子どもたちにけんばんハーモニカを教える。私にとっては初めての経験である。3回ほど、授業でこの楽器を使った。しかし、子どもたちはなかなか音を切れない。勝手に音を鳴らす。私がいらいらしているから、音楽の授業もちっとも楽しくない。そんな時、楽器会社の指導員の人が、この楽器について1時間指導してくれることになった。以下は、その人の方法である。

(1)音を出すときの合図を教える

「これから合図を決めます。私の言った通りにしなさい」

〈指示〉        〈動作〉
1、うた口用意 ⇒   うた口を口につける
2、演奏用意  ⇒   指をけんばんハーモニカにのせる
3、はじめ    ⇒   音を出す
4、やめ     ⇒   うた口を口から離す

 たったこれだけのことである。この指示だけで初めと終わりがぴったりそろう。「さあ、吹きますよ」ではない。「演奏用意」なのである。1年生の子どもに何か音楽家にでもなったような緊張感が一瞬ただよう。

(2)吹き方を教える

「みんなは英語で数いえるかな?」突然言われて「えー!?」と子どもたち。「知ってるよ。ワン、ツー、・・・」と知っているこは得意そうに言う。「5まででいいよ」と言って、子どもの声に合わせて板書する。
「ワン、トゥー、スリー、フォー、ファイブ」

〈発問〉 この中に、けんばんハーモニカを吹くときに大切な英語があります。どれでしょう。

「いらないの消して行くよ。どれ消そうか」
「ファイブ」「ワン」・・・と、子どもたちの声に合わせて次々と消して行き、最後に「トゥー」を残す。「わぁーい」「あたった」と、みんな大喜びである。

〈説明〉 けんばんハーモニカの国では、言葉は「トゥー」しかないのです。いつも「トゥー」でお話するんですよ。

 「ツーじゃなくてトゥーだよ」「口をとがらせて」と言われて、子どもたちは顔を見合わせながら、「トゥー、トゥー」と練習する。
「今度は、声を出さないで、トゥーって息だけ出してみて」
 このようにして、楽しく息の出し方をわからせることができる。

(3)手の形を教える

〈指示1〉両手を上に上げます。左手でボールを作ります。右手でグローブを作って、ボールをその中に入れます。

 頭上でグーとパーを作って合わせるのである。右手は自然と左手を包み込むグローブのような形になる。
 子どもたちは、「わあー。かっこいい。ピッチャーみたい」などと言っている。

〈指示2〉 下ろしてきて、その形のママ、両手を離します。

 胸の前で両手を離し、右手を机の上に置いて見る。

〈説明〉 そのグローブの手が、けんばんハーモニカの手の形です。

 この後、実際に音を出して練習する。子どもたちは、けんばんハーモニカの言葉「トゥー」で、手「グローブ」で、合図に従って一生懸命に演奏していた。さすがに、指導員の人はプロだなぁと思った。他のものにたとえて子どもたちの興味を引きつけているし、大変わかりやすい指導だったのである。

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