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月川和雄さん (1949-2008)

 月川和雄さん(青山学院大学・昭和薬科大学非常勤講師、西洋古典学)が、2月28日、大腸がんのため亡くなりました。58歳でした。

 月川さんは、西洋古典古代の本草学・博物学がご専門で、テオフラストス『植物誌』全訳という重要な訳業もおありですが、古代から近代に至るまでの植物学史にもご造詣が深く(アグネス・アーバー『近代植物学の起源』を翻訳されています)、また性科学と同性愛文化についてもご関心を寄せるなど、南方熊楠とは幾重にも縁のある研究者でした。同性愛をめぐる南方と岩田準一との往復書簡『南方熊楠男色談義』も編輯刊行されています。近年は、国立科学博物館でギリシア語およびラテン語の講師を務められるかたわら、近代西欧の植物学者たちの仕事を丹念に追跡調査しつつ、南方邸・南方熊楠顕彰館の所蔵資料も毎年訪問調査されていました。

 南方熊楠の西欧近代科学との格闘は長く深いものでしたが、その全貌の解明は、月川さんが目録を作成された『ロンドン抜書』など南方の残した資料と著作の再検証をたんねんに続けることでしかなし得ず、その試みは現在まだ端緒についたばかりです。これからも、多くのことを教えていただけるものとばかり思っていた矢先の、突然の訃報には、ただただことばが見つかりません。

 謹んで月川さんのご冥福をお祈りいたします。

     2008. 3.24 旧南方熊楠資料研究会幹事 田村義也