【「大塔林道・野中・那智」 「勝浦から古座へ」】 < [フィールドノート] < [南方熊楠資料研究会]
南方邸資料を核とする田辺市の新施設の設立準備のため田辺市入りした、夏休み中の二週間にわたる出張のさなかの週末に、当研究会のメンバー二名が大塔山系の南紀の森を抜けて那智の大滝へと向かう見学ドライブを行いました。
ルートは、大塔村富里で国道371号線から分かれて、日置川の支流安川沿いに大塔山系を東へ分け入って本宮へと抜ける安川大塔川林道です。この路で、百間山・法師山の北麓を安川渓谷沿いに分水嶺まで走り、その先は大塔川沿いに、大塔山北麓から紀伊半島屈指の渓谷美を誇る黒蔵谷のトバ口を覗く山間路を北東の川湯温泉郷へ向かうというもくろみでしたが、この時はなんと林道が途中で崩落しており、いったん富里の国道371号線までもどって国道311号線で本宮まで向かうはめになりました。予期せぬ遠回りのお陰で、近露近郊の野中の一方杉に立ち寄って、ささやかな発見もありました。
オオバヤドリギ。本来熱帯性のもの。日置川に安川が合流する富里付近から林道に入ってほどない安川のほとり。
同じオオバヤドリギを、2002年3月に撮影したもの(参考)。
一年中湿ったままの場所で、落ちたままの枝に発生した色鮮やかなキノコ。
湿った朽木にとりついているのは、変形菌マメホコリの仲間 Lycogala sp. か。もう一方の写真では、乾いた倒木から謎の芽が伸びていますが、菌類か植物か分かりません。
変形菌キケホコリ Trichia affinis か。撮影場所は、下のトンネルより東へ入ったところです。
森の小動物たち。爪の先ほどのカエルと、渦巻き状に巣を張っていた小さなクモ。車の通る林道でも、崖際はいつでも湧き水で濡れています。ここは日も射さないところで、露出アンダーになりました。
落ち葉の間に、ヒルがいました。身体を伸縮させるとこんなに大きさが変わります。
崖際からの湧き水がたまった路側の水たまりには、腹の真っ赤なイモリが。下のトンネルの写真でもちらりと見えるように、陽の当たらない路側の崖際はずっとこんな感じで水に濡れて、シダに覆われています。
上の写真の撮影場所より手前(西側)、安川渓谷、小鮫谷方面への路が分岐する直前のトンネルを西側から見たところ。こちら側は谷間ですが、向こう側は南側が川で、日射しが降り注いでいるのが分かります。
林道から見上げた大塔山系の森(法師山北麓の鉢伏山附近)。深い緑色をした照葉樹林。
こちらは、深い谷を挟んで向かいの崖を見たところ。夏の日射しが照り返しています。
11時15分、大塔川側へ抜けたところで、路肩が崩落して通行出来なくなっていた箇所から崖を見おろす安田(今回のドライバー)と、17時4分、那智の大滝を背景に立つ田村(今回のカメラマン)。崩落地点からもと来た林道をもどり、R311 と R168 で近露、野中、本宮町、新宮市と回って那智山につくまでにこの間の4時間を費やしてしまい、結局この日は上富田の根城への帰還をあきらめました。
予期せぬ迂回で、神社合祀反対の熊楠古戦場の一つ、野中の一方杉と継桜王子の側を通ることになり、ちょっと車を停めてみました。すると、参詣道近くに、かわいらしい牛馬童子像をみつけました。かわいいお地蔵さんが牛と馬に乗っています。有名になった本家の牛馬童子(箸折峠)からは東に 3km くらいのところです。