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◆丸島(まるしま)



※ この地図は、大日本帝国陸地測量部発行の1/10,000地形図「布屋」(昭和6.5)を使用したものである

所在:尼崎市扇町(おうぎまち)
地形図:大阪西北部/大阪西北部
離村の背景:災害
形態:海沿いに家屋が集まる
標高:数m
訪問:2022年12月

 

 現在の扇町の北東部にあった集落
 旧版地形図より、北東の東丸島と南西の西丸島に大まかに分かれていることが分かる。

 市史の「大字別の小字名」および小字図(刊行当時〔=昭和49年〕)において「丸島」の字名は見当たらないものの、小字図を見る限りいずれも大字西新田で、西丸島は字平左衛門(へいざえもん)新田、東丸島は字喜左衛門(きざえもん)新田に属していたよう。

 大庄村誌(※1)によると、天保(1830-44年)の頃、丸島海岸に藤原清助という人物が来住し、当地の宮崎某の助力を得て宮崎と名乗り、ここを拠点にして漁場開拓に乗り出したとのこと。これがそもそもの海岸利用の始まりであった。その頃は寄洲が丸い島を形作っていたので、自然と丸島と呼ばれるようになったという。堤防も道もない荒涼とした草原で、人々は砂丘の上に家を構えて居住。のち漁場も拡大し、戸数も4、50戸に増加した。
 明治4年に高潮により罹災。40戸余りの漁師の家屋は流失、漁船等はほとんど流され、死者も多数出た。
 
その後も被害があり3、40戸となったが、のち60戸程度にまで発展した。
 昭和9年9月、室戸台風によりすべての漁船は流され丸島は大浜とともに全域が流失。又兵衛にも大きな被害が生じた。以後、漁村として栄えていた海岸は、工場地帯として発展していった。

 なお市史では江戸時代の新田開発について詳細な記述があるものの、丸島集落の発生について具体的な言及はない(風水害についての記述はある)。大庄村誌の記述より鑑み、当地は周囲で盛んに行われた新田開発に伴う集落とは別に、漁業集落として独自に発生したものであると思われる。
 以下参考までに、市史より平左衛門新田・喜左衛門新田について述べる。

 平左衛門新田は、天保10(1839)年に西新田村(のち尼崎市)および鳴尾村(のち西宮市)地内に開村した新田。その範囲は概ね現在の丸島町の南部・扇町の一部と平左衛門町の一帯。
 当地は中洲で島をなしていたため「丸島」といわれ、古くから西新田村と鳴尾村との共有の草刈り場として利用されていた。しかし17、8世紀になると丸島も耕地への転用が考えられるようになった。宝暦8(1758)年に一度鳴尾村がこの地の開発を幕府に願い出たことがあったが、大水の際武庫川の流れが妨げられる、鳴尾村により西新田村の権利が侵される、開発によって漁場がなくなるといった武庫郡・川辺郡南部の村々の反対があり、実現には至らなかった。
 その後19世紀に入り、文政・天保期にまた開発の話が持ち上がった。その開発交渉の過程で、天保4(1833)年になって、今まで西新田・鳴尾の両村の共同利用地であった丸島を東西に二分する話が決まった。東寄り3割3分を西新田村領、西寄り6割7分を鳴尾村領と定めた。
 当時鳴尾村の代官辻富次郎は丸島開発に積極的で、彼の世話で開発反対の村々も説得して、ついに天保8年西新田村の平左衛門と藤兵衛に開発の許可が下りることとなった。同10年平左衛門新田が開発された。
 新田のうち西側は町村制施行後も鳴尾村に属したが、昭和26年鳴尾村が西宮市に編入され、西宮市の一部となった。のち
大字平左衛門町となり、昭和44年4月尼崎市に編入(※2)
 また喜左衛門新田は、文化13(1816)年に西新田村に開かれた。
 なお丸島集落の風水害の罹災に状況については、大庄村誌と概ね同様の記述。

※1 大庄(おおしょう)村は、現在の尼崎市の南西部にあった村。昭和17年尼崎市に編入
※2 かつては
武庫川団地前駅の北東400mの場所から、真南の丸島水門付近にかけて市境が通っていた

 東丸島は現在の「尼崎の森中 央緑地」内の「尼崎スポーツの森」付近、西丸島は同緑地内の茅葺き民家の北で、阪神高速に東西に沿う。なお茅葺き民家は芦屋市三条町(さんじょうちょう)の旧小阪(こさか)家の住宅(※3)を移築復元したもので、丸島とは関係がない。

※3 18世紀後期に建築と推定され、同家は庄屋を務めたこともある。平成6年芦屋市指定文化財となるが、同7年の阪神大震災により全壊。解体後は市が保管。平成28年県に譲渡され、その後当地に復元された。平成30年より県指定重要有形文化財(説明板より要約)

 


写真1 東丸島跡(推定地)を東側から見る

写真2 西丸島跡(推定地)を東側から見る

(写真3 茅葺き民家)

 

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