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◆黄渓(おうけい)



※ この地図は、国土地理院発行の1/50,000地形図「徳舜瞥山」(昭和44.3)を使用したものである

在:壮瞥町黄渓
地形図:後志立川/ニセコ 礼文華峠/豊浦
異表記:硫黄山(集落旧称)
形態:川沿いの斜面に家屋や施設が集まる
離村の背景:産業の衰退
標高:約570m
訪問:2014年5月(
HEYANEKO氏ほかと共同)

 

 町の東南部、長流(おさる)川支流の弁景(べんけい)川上流にある。硫黄を産出した鉱山に伴う集落。
 
町史によると、発見は明治35年。町内弁景(べんけい)から訪れていた釣り人が焚き火をしていたところ、石塊に燃え移ったことにちなむ。明治37年函館の岩井氏の所有となり採掘を開始したが、同41年頃中止。明治44年5月、札幌の小田氏の所有となり6月から採鉱開始。採鉱主任が良好な鉱脈を発見したことにより、長屋3棟、飯場2棟を設け精錬を開始。次第に従業員やその家族が増え、「硫黄山」と称される集落を形成した。大正9年北海道硫黄株式会社設立。同社の所有となる(※1・2)。昭和10年代前半に最盛期を迎え戸口も400戸2,500人ほどになるが、硫黄生産の主流が原油精製の過程によるものに移行し、需要は減少。硫黄の生産を中止し硫化鉱のみとなり、経営規模も縮小。昭和46年には町による集団移転の計画もあり、同47年町内滝之町(たきのまち)に町営住宅64戸が完成、同年12月中に全戸が移転した。その後はバスによる通勤となったが硫化鉱の需要も激減し、昭和48年6月30日に閉山した。

※1 本文では「北海道硫黄株式会社が、(中略)新会社として大正九年四月幌別鉱業所を発足した」とあるが、「幌別鉱業所」を会社とする表現はやや疑問。同社の幌別鉱業所となったと考えるの自然か。項の見出しも「北海道硫黄株式会社幌別鉱業所」とある。なお同社が所有した鉱業所として嬬恋村(群馬)の小串硫黄鉱山(=北海道硫黄株式会社小串鉱業所)がある
※2 また幌別鉱業所の本拠地は登別市(当時幌別村)であり、幌別鉱山が所在する。
なぜ遠く離れた当地が「幌別鉱業所」に含まれているのか、理由や経緯は不明。ただし大正3年登別の幌別鉱業所(当地に対して「下山」と称されていたよう)から鉄索が架設され、生産品や生活物資が搬送されており、密接な関係はあったよう

 当地にあった学校の沿革は以下のとおり。

(小学校)
 大正3.4.1  弁景簡易教育所黄渓特別教授場開設(5月授業開始)
 大正5.9.6  壮瞥尋常高等小学校黄渓分校となる
 大正6.4.1  久保内(くぼない)尋常高等小学校黄渓分校となる
 大正6.10  校舎移転
 大正10.9.15  弁景小学校(※3)黄渓分校となる
 昭和6.4.1  独立。黄渓尋常小学校となる
 昭和8.4.1

 高等科併置。黄渓尋常高等小学校となる

 昭和16.4.1  黄渓国民学校となる

 昭和22.4.1

 黄渓小学校となる
 昭和47.3.31  廃校

(中学校)
 昭和22.5.1  久保内中学校黄渓分校開校。小学校に併置
 昭和23.4.1  独立。黄渓中学校となる
 昭和28.10.26  独立校舎完成
 昭和47.3.31  廃校

※3 弁景尋常小学校の誤り?

 また神社として「硫黄山神社」があり、鉱山の安全と隆昌を祈願し大正9年創立。閉山に伴い昭和48年登別市鉱山町(こうざんちょう)の神社に合祀された。
 なお字弁景は昭和30年からの行政字で、もとは壮瞥村字弁景の一部。

 探索はHEYANEKO氏・ウインデー氏(SNSの友人)と共同で行った。現地では道道の分岐から約900m進んだ辺りを中心に、いくらかの廃墟が残存。病院とされる建物(写真6)の裏には緩い階段を登ってやや広い平坦地があり、ウインデー氏によると小学校跡である可能性が高いとのこと(※)。平坦地の隅には大型の便槽(写真8)が確認でき、大人数を擁した施設であったことが想像できる。さきの緩い階段の登り口付近には門柱のような遺構が朽ちながら残っている。ただし対になった門柱の間に水路が通され、妙な構造になっている。なお住居の建物は残っておらず、住宅群跡には僅かな遺構が散見されるのみ。さらに道路が弁景川を渡る辺りまで歩いてみたが、鉱山関連の遺構が少し見られた程度。

※追記 のちHEYANEKO氏により断定

 


写真1 黄渓橋

写真2 鉱業所方面を望む

写真3 プロパンガス庫

写真4 浴場

写真5 写真4にて。浴槽

写真6 何かの建物

写真7 病院

写真8 小学校前の階段

写真9 小学校便所

写真10 門柱(水路に落下。写真上側に基部が見える)

写真11 石垣

写真12 集落内の道

写真13 石垣と電柱

写真14 石垣と登り道

写真15 住宅跡

写真16 住宅跡

写真17 住宅跡の遺構

写真18 何かの建物

写真19 石垣

写真20 遺構(写真16と同じもの)

写真21 何かの跡

写真22 何かの倉庫

写真23 川近くの構造物

写真24 何かの跡

写真25 何かの跡

 

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