◇◇◇山歩きの情報・山の事故◇◇◇

■山の遭難・事故
三星山 2007年4月に田辺市街に近い三星山で遭難事故がありました。
高い山だけでなくこのような身近な場所でも事故が発生します。
幸いケガも無く無事救出されましたが参考になればと掲載させていただ
きます。

皆さんも一度目を通して見て下さい。

◆三星山の地図はこちら
◆周辺地図はこちら

<写真 左より竜神山(なだらかな山)、三星山(中央)、三星連山「暗谷山」(田辺市街より)>

<慣れ親しんだ山での遭難>
三星山  2007年4月1日、田辺市の竜神山の東側に位置する三星山は、
 巨岩が多く眼下に田辺市街や紀伊水道が見え360度の展望は絶
 景であるから、人気のある山として地元で親しまれた山だ。

<写真 中央後ろ三星山、右手の窪んだ所が西岡のコル(竜神山方面より)>


 Tさん(65歳)とKさん(56歳)の2人は、日帰りの予定で、佐向谷登山口
 から竜星の辻をへて西岡のコルから三星を目指し、午前9時から登山
 開始、竜星の辻までは順調に歩き、西岡のコルにいたるルートでコー
 スを外れ、気がついたら道に迷っていた。
 竜星の辻で直ぐに小川を渡り、左(北東)に歩けば正規のルートだが、小川を渡り、赤いテープを
 くぐり入山禁止の札を見ながら松茸山に迷い込んだらしい。
 その後正規のルートを探して山中をさまよい歩いたが、ルートが見つからず、市内のアウトドア
 ショップに電話し、道迷いの相談を3回するが全く何処にいるのかわからない状態が続き、最終
 的に救助の要請をし、午後9時15分現場に駆けつけた救助員に発見され事なきを得た。



三星山案内図  1回目の電話が、13時過ぎに当人よりあり、「道に迷ってしまったので教えてほ
 しい」という事だったので、「落ち着いて探せば、大丈夫なので・・・」と言うような
 話をして電話を切る。
 2回目が14時過ぎ、3回目が15時過ぎに電話がある。話の内容は、「ヌタバ(イ
 ノシシの遊び場)があり、岩崖があるので行き場が無い」と何度も言って来る。
 相手が少し焦っている様に聞こえた事から、「落ち着いて探して、今度見つから
 なかったら探しに行きますから」と伝える。
 4回目の電話が16時過ぎにあり、「助けに来て下さい」と言う救助の要請を受け、
 すぐさま準備にかかり、荷物をまとめ佐向谷登山口に着いたのが16時50分だ
 った。

登山口  登山口から、「今から笛を吹きながら山に入るので、もし聞こえたら返答してほし
 い」と相手に伝え、竜星の辻まで駆け足で行き捜索にかかる。
 西岡のコルまで慎重に捜索するが全く返答がない。
 携帯電話で現在地の特徴物を確認すると、「川を1回渡り、ここに来た。」「山の上
 (尾根)には来ておらず、山の中腹にいてる」とも言ってきた。何度も「側にヌタバ
 があり、岩崖があるので行き場が無い」と言っている。相手の話振りから、三星連
 山の尾根の下の山の中だろうと想定したが、反応が無いので、2手に分かれて捜
 索を開始する。
 1方は西岡のコル〜三星山山頂〜竜星のコルへ、もう一方は西岡のコル〜狼谷
 分岐〜竜星のコルへ沢筋を捜索するが応答が無い。時計は18時になろうとし
 ている、小雨が降り始めた事から119(消防署)に救助要請をする。

竜星の辻  18時25分、佐向谷登山口に救助隊員5人と待ち合わせし状況を説明する。その
 際約1時間の捜索により捜査範囲の絞り込みが出来ているので、この後は、竜星
 の辻から東側にあたる尾根(三星連山)までの中腹まで探すように作戦を練るが、
 登山道以外の道はわかりずらく、松茸山の道は地図に載っていないので消防署と
 相談の上、地元の愛郷会の方々に道案内をお願いすることにする。

 捜索にあたり、資材及び人員不足から応援要請をし、19時20分に上秋津農村
 改善センターに集合し直し、作戦を立て直し、佐向谷登山口に向かう。
 消防15人・警察8人・愛郷会5人・一般2人の総勢約30名となる。
 20時11分、佐向谷登山口着。指揮本部を設置し、20時23分に2班に分か
 て捜索開始。途中、竜星の辻まで行き、1班は竜星の辻を東に伸びた尾根を捜索。
 2班は西岡のコル方面を捜索する。1班は途中Y字路になった為、さらにA班(尾根を
 直登)、B班(主尾根を右に巻くルート)の2つに分かれての行動となる。
 20時54分、遭難者から捜索隊の声が聞こえるとの連絡あり。さらに21時00分、
 遭難者から捜索隊のライトが見えるとの連絡が入り、1-A班からも遭難者のライトを
 確認する。
 21時15分、1-A班が遭難者2名と接触、無事を確認して自力で下山。
 22時08分無事下山が終了する。

<写真 上:竜神山・三星山案内板 中:左向谷登山口 下:竜星の辻>

<道迷いの心理>
入口  2人は、竜星の辻を沢に沿ってルートを取るべきところを、小川を渡った
 所で、目の前にある松茸山の小径(小道より細い道)を直接尾根に沿って
 登って行ったらしい。
 この入口には、赤いビニールヒモが張ってあり、「入山禁止」の札が掛か
 っているにもかかわらず、赤いテープをくぐって入って行ったらしい。
 また、迷い込んだ事に気付くのが遅れた原因として、道迷いの心理があ
 り遭難者独特の心理状態に陥っていく。
 それは、「せっかくだから」「・・・なはず」「なんとかなる」「間違ったら恥ずか
 しい」「本当に戻れるだろうか?」という心理が働き、これが不安や恐怖を
 生み出す事となる。
 夕方が近づけば周りは暗くなり、さらに不安や恐怖心が倍増していき半
 パニック状態に陥ったと考えられる。

<写真 迷い込んだ入口>

暗谷山  道迷いの原因は、迂闊さにあったが、当の本人は、どうしても早くその状
 況を脱したいといった焦りや下山しないと家族が心配して周囲にも迷惑を
 かけるなどといったプレッシャーに支配される事が考えられ、遭難者には、
 その場を動かず体力を温存する事をうながしつつ、必ず救助される事を
 伝え安心させる事です。
 今回の場合2人は、マツタケ山に新しく出来た小径につられる様に、何の
 疑いも無く間違ったルートに入ってしまったと推測されます。
 途中、マーキングや誘導など有効な情報に注意を向け、総合的に進むべ
 き方向を判断して、ナビゲーションしていれば遭難せずに済んだものだが、
 何の疑いも無く進んで行き、迷ってしまったと思った時には、時すでに遅
 しで何処で迷ったのか、何処から来たのかすらわらない、
 結果回復不能な道迷いに陥る事となった様に考えられます。
 しかし、今回の遭難事故で発見された場所は、意外にも尾根道がしっか
 りとついた三星連山の暗谷山だったには驚かされた。

<写真 中央が暗谷山、左後が槙山、右後ろが高尾山>

道 ヌタバ 発見場所








▲迷い込んだ道(上より)          ▲ヌタバ            ▲尾根道上の発見場所

■三星山地図
マップ


























<常に疑いを持つ>
コンパス  登山歴の長い者やナビゲーション技術に長けた者は決して迷わない
 と言う訳ではありません。
 常に「ルートから外れたのでは?」という疑問を持つ事が肝心です。
 常時「ルートから外れたのでは?」と感じれば、地図の方向を確認し、
 現在地を確かめ、本当にルートから外れた場所にいるのか、それと
 も地図の間違いや自分の記憶違いなのかを判断し、深刻な道迷い
 に陥る事を回避出来ます。
 山道では、ルートから外れない事は100%無理に等しく、重要な事
 はそれをどれだけ早く自覚し、対処出来るかです。
 その為には確信が持てない時には、まず疑いを持つ事だと思います。
 また、行動中に遭う危険や身体的トラブルへの対処として、一般登
 山者も危機管理を自分自身がする
必要を感じます。

 2007年警察庁発表における山岳遭難の概況によると、遭難総数1684名の内、1位「道
 迷い」594名(35.3%)と最多である事を発表しています。
 また、携帯電話の普及で容易に救助要請出来る様になった事情も大きい事、山歩きに不可
 欠なはずのナビゲーション技術が軽視される事も遭難者が増加している原因ではないかと
 思います。
 北アルプスなどの高山よりも低山での中高年登山者による遭難事故が多いのも気になる所
 です。
 これらは氷山の一角で、今後とも身近な所で起こりうる事故だと考えられる。




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