◇◇◇山歩きの情報◇◇◇

■山岳遭難・事故について
ここ10年前ぐらいから中高年の登山・山歩きが盛んになりそれに伴って山岳事故の
形態も変わってきました。
最近新聞等の記事やホームページなどにも掲載されていますので紹介していきたい
と思います。
皆さんも一度目を通して見て下さい。


●朝日新聞日曜版 12月2日付 「スポーツラボ」に記事が掲載されましたので紹介します。12/3up
1 <朝日新聞記事より>
 山の遭難が増えている。警察庁の統計では、昨年の遭難件数(1417件)、遭難
 者数(1853人)は61年以降最悪で、10年前に比べて倍増した。

 一般の山岳遭難のイメージは、冬山や岩登りなど「厳しく、危険な登山行為中」に
 起きていると思われがちだ。 だが、昨年の態様別(遭難の内容)をみると、1位
 道迷い38.5%2位滑落15.4%3位転倒11.0%の順だった。
 登山道から外れて迷ったり、転んでかがをするなどの「不注意}が事故につながって
 いる。

 背景に登山者の高齢化がある。  遭難者の年代別は登山人気を支える40歳以上
 の中高年者が81.3%を占め、65歳以上の高齢者は33.3%。
 高齢者は体力が衰え、持病がある人も多い。 若者に比べてリスクが高い。

 山岳遭難を調査している関西大の青山千彰教授(危機情報論)は「どんな遭難も複数
 の原因が絡み合って起きている。  どこかで負の連鎖を断ち切れば遭難
 防止につながる」と指摘する。例えば、道迷いの遭難で「体力不足+悪天候+疲労+
 メンバーの不調・・・」というケースは、疲れないよう行程を短くすることで防げることも
 ある。
 山岳遭難も最近は警察や防災ヘリコプターによる迅速な救助活動が主流となった。
 1分1秒でも救助が早ければ、無事救出につながる。
 実際、過去10年間の死者・行方不明者は2500人前後と横ばい傾向にある。

 それでも救助の際、遭難者はただ待つだけではいけない。長野県警航空隊の柄沢
 良一警部補は「上空から米粒のような遭難者を見つけるのは難しい」という。
 発見されやすいよう自然界に存在しない蛍光色のピンクや黄色のウエアを着用した
 り、発煙筒やたき火で煙を出して場所を知らせたりする工夫が必要だ。
(近藤 幸夫)


<助け易さ、助けられ易さ>
1  別のコーナーでも書いたのですが、今年の4月に道迷いの方を探しに
 行き、5月に店の山歩きの途中で歩けなくなり救助を求めたりと実際に
 体験しました。(幸いどちらも大きな事故にもならず事なきを得ました。)
 その時感じた事を少し書かしていただきます。
 ※近郊の山を想定しております。

 どちらの事例も幸い携帯電話の電波が飛ぶ位置での出来事でしたの
 で割合スムーズに解決しましたが、山の中で人を探すのは非常に難
 しいというのが実感です。
 救助要請した方は、林道の終点の開けた場所に移動し、GPSで座標
 を確認し連絡したので、ヘリコプターで直ぐにピックアップしてもらえま
 した。
 もし一刻を争う場合は、いかに早く探してもらえるかが非常に大切か
 と思います。

1迷った時に地図を確認してもどこにいるか分からない。
 道に迷った時やケガなどで援助を求める場合、まず自分がどこにいるのか伝
 えなければ助けてもらえません。

 当たり前の事ですが、ルートを地図と照らし合わせながら歩いていれば迷っ
 た時点で少し遡れば回避出来ますが、地図を見ずに迷ってしまうとほぼ自分
 のいる位置は特定出来ません。
 普段から地図を確認しながら歩くように心掛けて下さい。
 迷ったと気が付いた場合は、まずは冷静になり崖や大きな岩、尾根の線や沢
 の位置を地図と照らし合わせ位置を特定して行きます。
 (むやみやたらに歩き回らない)


音で助けを求めても位置特定は難しい
 たとえば声で助けを求められても近くでないとほぼ聞こえないようです。
 今回、フエを吹きながら探し、駐車場から車のクラクションを鳴らしたが実際
 には全く聞こえていなかったようです。(途中にある山の起伏で邪魔
 されていて割合近くでも聞こえなかった様です。)
 また最低フエは携帯しておく方が良いと思います。
 (大きな声は長く出せません。)


見通しの良い場所で助けを待つ
 尾根や開けた場所で助けを待つ方が発見されやすいです。ケガなどで動けな
 い場合は別として空から見つけてもらいやすい場所に移動、間違っても谷に沿
 って降りない。(滑落の危険や木立で上から見つけにくい。)


位置を特定しやすくする。
 上の記事の中にもありますがヘリコプターで上空を飛んでも中々特定出来ない
 そうです。
 例えば消防でケガをした人を救助に行っても現場に着くとヘリコプターにGPS
 の座標を連絡し、フラッシュのライトで誘導しないと上からは中々見つけられな
 いないそうです。
 特に上空からの捜索だけでは、救助者の特定は非常に難しいと思います。
 出来るだけ分かりやすい色の物でアピールし、近くにヘリがくればフラッシュラ
 イトや発煙筒、花火などで助けを求めるとよいようです。
 ※近郊の山でしたら携帯電話とGPS(道に迷っても修正しやすい)を持っておく
  と心強いです。


ライトは必需品
 夜間はヘリコプターからの捜索は出来ませんが、ライトの明かりは良く見えます。
 四月の遭難でも救助者の方はライトの明かりがよく見えたと言っていました。
 探す方も真っ暗な中にライトが光っていれば見つけやすいと思います。
 日帰りの山歩きでもヘッドライトは持参ください。
 ※リーダーの方は救助用のフラッシュライトを是非お持ち下さい。


<中高年山岳遭難>
 登頂目的に落とし穴 基本軽視に問題
  山で遭難する中高年が後を絶たない。死者・行方不明者の約9割が40歳以上だ。
 背景に何があるのか [藤原 章生]

  警視庁などによると、今年の夏山での遭難(7、8月)による死者・行方不明者は
 41人で、38人が40歳以上。10月7日からの3連休には長野県だけで計6人
 が死亡、すべて50歳以上だった。05年の遭難は10年前より約5割増の1684件
 (死者・行方不明者273人)。うち1372件(同244人)が40歳以上だ。
  「登山の本来の目的は下山。それが一番難しい」と名古屋市の登山家で医師、原眞さん
 (70)は話す。山登りには人の性格が表れるとみる原さんは「最近、目立つのは目的の
 固定化。頂上に登ることしか考えず、吹雪などの過酷な場面に直面すると、下山の判断
 も、考える力もなくす」と指摘。判断力は経験で養うものだが、基本を身に着けずに、
 登山を続ける人が増えるばかりという。

  原さんら専門家はその背景に「百名山ブーム」があると見ている。
 99年9月に北海道の羊蹄山で疲労凍死した女性(当時64歳)のリュックにはセーター
 が使われずに残されていた。羊蹄山は「百名山踏破」を目指す女性の100ヶ所目の頂。
 「セーターを着ていれば・・・。99回の登山経験は何だったのか」と救助関係者は振り
 返る。

  ブームは登山家の故深田久弥氏が64年に出版した「日本百名山」が下敷き。百名山は
 富士山などの3000メートル級の山をはじめ、筑波山と開聞岳以外は1500メートル
 以上で、90年代からその制覇を試みる人が増えた。易しいルートで登るだけでは登山の
 技術は上達しないが「百名山に登れば上級者」という錯覚に陥りやすい。「収集好きの日本
 人らしいブームだが、自分で対象を選び計画を立て、実地に試すという最も大事な能力を
 奪っている」と原さんは警告する。

  80年末からガイドを務めるNPO「北海道山岳活動サポート」の樋口和生さん(44)は
 「この10年で地図を読まない登山者が増えた」と言う。花々や景色に目は向くが、地図と
 磁石で地形を見て位置を確認する基本を学ぶ人が少ないという。「毎年来ていても、ガイド
 に頼りきっている」

 東京都山岳連盟の渡辺輝男さん(49)によると10年前はほとんど見られなっかた 道迷い
 平易な登山道からの転落 病気が遭難の原因の上位を占める。「登山は自然を身近に感じる
 得がたいスポーツだが、(年々体力が落ちていく)中高年の場合、難しいルートは行かない
 以上、「自分は地図も読めない初心者」という意識を持ち続けることが大切だ」と渡辺さんは
 話している。

 <毎日新聞2006年11月2日 Yahoo!ニュースより>

<2005年度山岳遭難事故>

 山岳遭難が過去最悪
 中高年の登山者増で死者・不明273人


1   昨年1年間の全国の山岳遭難件数は1382件(前年より61件増)、遭難者数は
 1684人(同75人増)、うち死者・行方不明者は273人(同6人増)で、いずれも統
 計が残っている1961年以降で最悪となったことが、警察庁のまとめで分かった。
  警察庁は「中高年の登山者数の増加が背景にあるのではないか。
 十分な装備で出掛け、登山の届けも忘れないでほしい」と呼びかけている。
  まとめによると、負傷者716人(同56人増)も過去最悪。無事救出されたのは
 695人だった。
  全遭難者を年齢別にみると、増加傾向が続いていた40歳以上の中高年が13
 72人で81.5%を占めた。最も多いのは60歳〜64歳の279人で、55歳〜59
 歳が244人だった。
  目的別では、ハイキングや沢登りも含む登山が1175人で69.8%。山菜採りが
 394人で23.4%。
  全遭難件数の40.2%にあたる555件で、遭難者は現場から携帯  電話を使って救助を要請していた。
 <紀伊民報2006年7月7日付け記事より>

<関連ウエーブ>
群馬県警 中高年登山者へのアドバイス
あなたの健康百科 中高年の登山術
あなたの健康百科 気を付けよう中高年の登山
長野県警山岳情報 安全なツアー登山のために
スポーツ報知 団体登山の危うさ
自然体験活動QQレスキュー隊 登山の注意事項
文部科学省登山研修所 登山の基礎知識

 「オハナのハイキング・トレッキングツアー」でも次のような注意書きをしています。
※次の方はご遠慮下さい。
 どこに行くかも分かって無い方、協調性の無い方、雨具・地形図・コンパス・ヘッドライト・  携帯電話を持っていない方


■オハナに来るお客さんと山に行ったり、話をしていて危ないなと感じるのがここに書いている様な事です。
 ・1人でよく山に行く方、逆に何十人で行く方。
  もちろん1人は緊急時に連絡が難しい事ですが、逆に大人数になると緊急時小回り
  がきかず大きな事故になる場合があります。(人数が増えるほどリスクが増えます。)

 ・誰かと一緒に行くので自分は何処に行くのか、どのコースを通るのか分かっていない方
  リーダーやコースをわかっている人がケガをした時、自分が道に迷った時などを想定して行く前に
  勉強しておいて下さい。

 ・自分のペースで先に行ったり誰にも言わずにトイレに行ったりする人
  一緒に山に行って怖いのはこのタイプ。自分は良いのですが他の人に迷惑がかかります。
  身に覚えのある方は十分注意して下さい。自分だけなく他の人にも危険がおよびます。

 ・地形図を持たない、持っていても見ない、見方がわからない人。
  地形図・コンパスは必ず個々に携帯してきちっと自分のいる場所を把握する。
  地形図は、山岳地図と国土地理院の25000/1が必要です。また日頃より地図の見方を勉強しておく。

 ・「雨の時は行かないから雨具を持たない」「雨具は荷物になるので持たない」と言う方がいます。
  ウソのような本当の話。この様に言われる方は以外に多いです。私も最初聞いた時は「エッ・・」絶句しましたが、
  最近なれました。山はいつ雨が降るかわかりません。また雨具は防寒着になります。
  山中で一晩過ごさなければならないような緊急時は生死を分けます。
  (冬だけでなく夏場は薄着をしているので余計必要です。)

 ・高い山や危ない山には行かない。
  高い山は高い山の危なさ、低い山は低い山特有の危なさがあります。
  たとえば低い山は登山道以外に作業道や獣道が多く、夏場になると樹や草が茂って道が わからなく事が
  多々あります。熊野古道でも遭難事故がおこっています。

 ・自分の行先を家族の人に言っていない方
  緊急時に捜しようがありません。必ず行先コース・メンバーを伝えておく事。


★皆さんも山に行く時は余裕のある計画ときちっとした装備を持ってお出かけ下さい。
 また普段も歩いたりして体を動かす習慣をつけ、山歩きの時も「もし」を想定しておく事
 ですばやい対応が出来ると思います。
 楽しい山歩きです。事故のないように!!



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