備長炭記念公園付属「水辺の森」

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この施設については、ここ2年ばかり、すこしかかわっているので、その範囲で 書きます。

1.経過
「水辺の森」は、もともと水の流れるビオトープとして、ホタルも発生するような ものを目指していたようです。1998年に作られたときは、ワサビ田のように、小石の 間を水が流れるようなデザインでした。ところが、水底の処理がまずかったらしく、 まったく水がたまらなかったので、1998年に基本的に考えを変えて、水流のある細長い池、 というものにしました。池はコンクリートでかため、そこに石や泥で植物の はえる土台を作ったものです。池の真ん中にはこれまた細長い島が、大きな石で 囲んで土を盛って作られました。
 できは悪くないのですが、これらの形がすべてかっちりと長方形、というのが…
長方形の池の下流側からはさらに溝でつないだ小さな池があり、ここは止水域 という設定。
 水は、すぐそばに堰があって、農業用の水路があるので、そこからもらっている。 水量も充分あるので、地元の水利組合とも話し合いがついていて、つねに水を もらえるようになっていた。はずなんだが、実際には連絡不十分で水が少ない状態 のことが多かったり。
 で、下請けのそのまた下働き的にかかわるようになったのが1999年初夏ころ。 イボクサ・コナギ・ホタルイといった水田雑草があちこちに生えている他は、 普通の雑草だけの状態でした。そこで、例によって水性植物を植え込みはじめた。 この年に植えたのは、
チダケサシ・ミソハギ・ヌマトラノオ・クログワイ(大塔村木守)
ヤナギモ・コウホネ・オギノツメ(田辺)
ミズワラビ・キクモ(古座川町)
 ところが、これらがほとんど育たない。まともに育ったのはミソハギと クログワイだけ。流水部では泥底の表面に藍藻がひろがって、コウホネなど 植えた植物もそれに覆われてしまう有様。止水の部分ではアオミドロが 育ちすぎるし…。  この冬に考えたのがまず池の中の島が大きすぎる・単純な形過ぎる・ 水面に対して高すぎるということだった。そこで、3つある島のうち 1つは大きくえぐって浅い内湾ふうの形にし、もう一つには溝を掘って みた。これらは今ではメダカに利用されているらしい。
 また、この年の秋、ボタンウキクサとホテイアオイが放流され、 同時にヒメダカが見つかった。これは池ノ川でほぼ同時に同じ事が 起こっている。水草は捨てたが、ヒメダカはとりきれないと判断し、 そのまま放置した。
 池の回りの斜面にはウバメガシが植栽され、池のそばには子供の会で カシ類の苗が植え付けられた。ただし、これは裸地に直接植え込まれて おり、いまだに成育が悪い。
 2000年には流水域の周辺にネコヤナギとセキショウを植える事になった のですが、なんと両者を交互に等距離に植えている。ここは、メリハリを つけて要所要所にまとめてとかしてほしかった。もっとも、適当に 枯れて今はまあ具合よくなっています。
 この年は、どうも水草が育たないので、水際の湿地生殖物を中心に追加して みました。
アカバナ・コジュズスゲ・タチスゲ・ゴウソ・スブタ・ヤナギスブタ(龍神村)
ミズハコベ(田辺市新庄)
マツモ・ホッスモ・ホソバミズヒキモ・ヤマトミクリ(池ノ川ビオトープ)
フトヒルムシロ・イヌゴマ・ヌマトラノオ(古座川町)
スゲ類はほとんどよく育っている。水草ではミクリとフトヒルムシロが やっと育ちはじめ、このころから藍藻も少なくなって来たように思う。 マツモなどは止水のところに入れてみたが、あまり育っていない。やはりアオミドロだらけ のままです。
 2001年春には島にハンノキとリンドウ(白浜から)を植えてみました。これらは次第に育ち つつあり、秋にはリンドウの開花を確認。ほかに、イヌゴマの開花も確認。
全体としては、ヒルムシロはあまり増えていません。ミクリは面積を拡大中で、増えすぎ警戒中。 ツルヨシが面積を占め始めたのは問題でしょう。

観察や体験に訪れた小学校もあり、まずは楽しめる場所になったとは言えましょう。

2.現在の状況
もっとも目立つのはカワムツ(?)とメダカでしょう。いずれも群れをなして泳いでいます。 止水の池のほうにもカワムツがたくさんいて、メダカはむしろ流水の部分の 浅瀬に多いようです。ヒメダカはわずかに生き残っています。カダヤシは見られません。 メダカとカダヤシでは流水域では前者が勝つそうですから、ここは大丈夫かも知れません。
川からヨシノボリが入って来るかと思っていたのですが、不思議に見た事がありません。
初夏にはイモリがかなりやってきます。
水棲昆虫では、川からかげろうなどが入りこんでいるようです。
流水域の水中にはツルヨシ・ミクリが所々に集団を作っています。フトヒルムシロが すこし育ちはじめているので、もう少し広がってほしいものです。
止水域にはホタルイとクログワイくらいしか育っていません。
島の上はアメリカセンダングサがよく育って来ます。どちらかといえば あまりうれしくないのですが、とても大きくなります。アカバナ・ミソハギ・ ゴウソ・タチスゲなどの植えたものはよく育っています。2001年にリンドウを 植えました。これも育つと美しいので期待しています。
池の外周は一番植物が豊富で、チョウジタデ・ミゾソバ・ウナギツカミ・イボクサ・ その他カヤツリグサ科が10種くらいと、かなりの種類があります。

(2001年12月)


●2002年の状況

2002年は、いつの間にかツルヨシとミクリが繁殖して、流れが妨げられる状況との 戦いと言っていいでしょう。夏までは、それも眺める余裕があったのですが、夏を過ぎ ると、上流域では流れが見えなくて、そこに落ち葉の流入がつっかえる状況が、 流出部では、水面の大部分がミクリに占有される状況が起きてきました。これは、やは り手入れしなければなりません。市役所の手も入って、この両区域で、大幅な草刈りを 行いました。しかし、目を離すとすぐに復活する状態で、目が離せません。
池の向こう側では、1999年に植樹されたカシ類の苗木が、何とか1mほどに育ってきま した。ほかに勝手にはえてきた陽樹もあり、森の形成への期待ができますが、同時にク ズによる巻き着きの被害もあり、ここも今後の手入れが必要になりそうです。
他方、ヒルムシロやオミナエシ、リンドウなど育ってほしい植物も育ちはじめ、見栄え はよくなりました。新たにヒメシロアサザなども追加しましたが、今後は追加するより は、今ある植物の関わり合いを整理する方に仕事を向けることになりそうです。
動物については、ここの場合、手をふれることは必要ないように思います。
(2003年1月の追加)

●2003年の状況
ほぼ2002年の続きになります。藪ではクズの蔓切が必要であることがわかったので、気をつけて たまに切って回ったことで、若木の枝を捻じ曲げられることがなくなりました。アカメガシワを中心とする 雑木もそれなりに大きくなってきましたし。
水は水位が維持されていればよいのですが、たまに水が少なくなって、そのためにメダカ等の数が あまり多くならない場合がありました。
また、斜面への野生草花(ウツボグサ・ホタルブクロなど)の植え込みをはじめました。

●2004年の状況
この年、池より上の部分の樹木を育てる予定だった場所が、周囲の竹を切ったときの捨て場所として押しつ ぶされてしまいました。多少の若木が育っていたので、とても残念です。
藪の部分では、いよいよ森になって行く手応えが感じられるようになりました。植樹したカシ類は、それなりの 成長ですが、それでも高いものは2mにもなりました。他方、アカメガシワはある程度大きくなると枯れるようで、 2m以上になったものが倒れ、ほかの木も、よく見ると幹を菌類にやられています。その代わり、ミズキがそれを しのぐ勢いで育ち始め、また、ほかにもキブシやビナンカズラなど、何種類かの木が入ってくるようになりました。
池のほうでは、冬になってエビモの生存が確認でき、次に期待です。

今のようす

2004年の経過

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