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◆三条(さんじょう)



※ この地図は、地理調査所発行の1/50,000地形図「只見」(昭和21.10)を使用したものである

所在:金山町本名(ほんな)
地形図:貉ヶ森山/只見
形態:川沿いに家屋が集まる
標高:約360m
訪問:2023年6月

 

 大字本名の南部、霧来(きりき・きりきた)沢(只見(ただみ)川支流)左岸にある。
 1970年代の航空写真では複数の家屋が写っているものの、現在建造物は皆無で痕跡にも乏しい。道脇には墓地が管理されており、栗田姓を確認した

 HEYANEKO氏によると、当地には本名小学校三条分校があったとのこと。明治30年開校、昭和53年閉校(閉校時は冬季分校)。跡地は未確認。

 以下は資料『山口弥一郎選集』(昭和47)の「本名村三条民俗誌」より。

 霧来沢の上流より椀が流されてきたので、この上流にも村里があると、いわゆる椀流しの伝説がこの谷奥の三条部落の発見となっている。
 当地より2qほど山奥に「大アタリ」という地名があり、現在は1戸分の礎石しか見られないがそばには清水もあり、もとの集落の跡だと伝えている。
 三条はもと兄弟3人が足利時代末頃落人として住み、その中の道元・縫之助の2人が農耕を始めたともいう。現在はみな栗田姓であるが、これは本名(ほんな)の名主栗田金太郎配下にあったたため。
 『新編会津風土記』には9軒とある。古老の話では明治の中頃まで14戸。昭和13年の訪問時は12戸。再訪時の昭和24年には三条の女性と結婚した人物が加わり13戸。5度目訪問時の昭和27年は、この世帯が抜けており再び12戸。特に戸数制限はないが、長い間10戸内外にとどまっていたよう。
 12戸がすべて本名
(ほんな)の栗田金太郎の分家と称している。栗田氏は近江の栗太郡の出自で、足利氏の家臣であったが東北に落ちてきて本名の名主となり、郷里の地名を取って栗田と名乗ったとされる。
 水田は古くより開けていたが、小規模で全住民を賄えるほどの収穫はなかった。焼畑では麦・大豆・粟・その他雑穀、蕎麦などを栽培。
 繭・和紙・木材・木地・麻・山菜等を本名に出荷し現金収入を得ていた。和紙作りは古くから行われていた。木地業は1戸だけ残っているが、現在は休んでいる。
 集落の氏神として山神の祠がある。

 また以下は『ふるさとの夜話』(昭和57)より。

 三条はその地理的環境ゆえ集落存続の危機に瀕し、町により近く移転事業が行われようとしている。
 以前は本名の北から山を越えて谷を渡り狭い山道でようやく連絡していたが、昭和29年に霧来沢沿いに林道が開かれた。
 現在11戸のうち5戸は空家になっており、青壮年のほとんどは集落を離れ暮らしている。
 水田は3反ほど。畑も少なく蕎麦・粟などの雑穀を作っているに過ぎない。そのため数少ない青壮年は林業や土建業に従事し、また山菜やきのこを出荷したりして収入を得ている。
 昭和47年の聞き取りでは、以下のような内容が語られている。
 「祖先は何百年か前に越後から移ってきたよう。理由は分からないが追われる身であったため、隠遁生活をしていた。ところが川下に椀が流れているのを本名の名主が見つけ、村人を大勢連れ探しに来たためついに見つかってしまった。事情を話し庇護を求めるよう懇願したところ、名主(栗田氏)はいたって義侠心の強い人で、これを受け入れた。以来栗田家を本家と仰ぎ、長い間主従同様の関係を続けてきた。明治初年に名字の使用が許可されると、当時の12戸がみな栗田姓を名乗った」
 「越後の豪族に三条掃部頭(かもんのかみ)兼任(かねとう)という人がいた。その一子道明(みちあき)は京で宮廷に仕えていたが、これは源頼義の時代と聞く。ところがどういう事情か京を追われる身となり、越後へ逃げ帰るが追手も厳しく郷里の三条にもいられなくなり、ついに姿を消した。私の家では本来三条という名字を名乗るべきであった。それは三条掃部頭が遠い祖先であると確信しているため(※)。同様の事情で、ほか2軒でも「下山(しもやま)」、「丸山」の姓を名乗るのが本当だとお互いに信じている。三条へはまず私ども3人の祖先が落ち着いたとされており、そこは現在の場所ではなく10町余り北の現在は田になっているところ。刀や書付などもあったが盗難のおそれがあるとして名主(栗田氏)が持って行ったという。栗田家とは懇意であったこともあり許可を得て土蔵を見せてもらったこともあったが、それらしいものは残っていない」
 なお先祖は落人に違いないが、平家関係ではないという。

※ この家では、死後は代々生前の名前に「道明」と付けられているという

 


写真1 道路沿いの風景

写真2 平坦地


写真3 支流の居沢(いざわ)


写真4 道路からの枝道?(手前から奥方向)

写真5 浴槽

写真6 平坦地

写真7 平坦地

写真8 平坦地

写真9 墓地

写真10 同

 

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