◆枡形（ますがた） ※　この地図は、国土地理院発行の1／50,000地形図「勝木」（昭和41.5）を使用したものである 所在：鶴岡市（国有林） 地形図：雷／勝木 形態：川沿いから斜面にかけて家屋や施設が集まる 標高：約500m（鉱業事務所付近） 訪問：2018年11月（HEYANEKO氏と共同）   　村の南西部、鰍（かじか）沢（＝西大鳥川上流部。赤川水系）沿いにある。大泉（おおいずみ）鉱山（大鳥（おおとり）鉱山の後身）に伴う鉱山集落のひとつで、採鉱場付近に形成されたもの。 　表記については、村史では集落・河川ともに「枡」（「枡形集落」「枡形川」「字枡形」）、地形図では「桝」（「桝形川」「桝形山」）で、表記の揺れがあるが、ここでは平易なものを採った。 　村史によると、前身である大鳥鉱山を含めた主な沿革は以下のとおり。 大鳥鉱山 　享保2（1717） 　この年、西大鳥の三浦七郎左衛門が、通称外平（とひら）山（枡形川・鰍沢に挟まれた分水嶺にある）にて金の鉱脈を発見したと伝わる 　明治14 　伝承に着目した後藤某氏が、外平山にて金の採掘に着手。のち、鉱山権は鶴岡の真嶋氏に渡る 　明治15 　浅野氏の所有となる。金の採掘には成功せず、下ノ小沢のアンチモニー鉱や大床の銅鉱を採掘 　（数年後、富山の岩脇氏の所有となる） 　明治28 　古河市兵衛の所有となる。銅鉱の富鉱帯を発見 　明治38 　古河鉱業会社設立。同社の経営となり、規模拡大。大正に最盛期を迎える 　大正7.1.20 　午前4時頃、大雪崩が発生し鉱山街が被災。154人死亡（雪崩による死者数では国内2番目の記録） 　大正9頃 　第一次世界大戦後の世界恐慌の中、銅・亜鉛の価格低下が顕著となり、当地でも休山問題が持ち上がる 　大正11 　休山。翌年4月残務処理完了 大泉鉱山 　昭和12.9.18 　大日本鉱業株式会社が鉱区権を取得。当初は金銀鉱山として小規模に経営する方針であったが、探鉱の結果銅・亜鉛・硫化鉄を含む有望な鉱山であったため、大規模に開発することとなった 　昭和15 　選鉱所建設および鉄索架設が完了し、操業開始 　大鳥鉱山時代の主要銅山であった大床鉱区を買収 　昭和21.12.12 　索道見張所より出火。選鉱所・原動所など5棟を全焼。出鉱中止となる。鉱脈の涸渇と併せ閉山の意嚮を示したが、職員労務者一体となって自力再建を目指した 　昭和25.7 　新選鉱所完成。出鉱再開。前年の富鉱帯の発見もあり、生産量は順調に回復 　（昭和30年代に盛時を迎えるが、40年代には次第に衰退） 　昭和52 　出羽鉱業株式会社の経営となる 　昭和54 　閉山 　なお大鳥鉱山時代の鉱山街は通称「機械場」と呼ばれる場所で、枡形より4�qほど下流にあった（現在の県道で換算）。鰍沢を挟んで「東山」と「西山」に分かれ、前者には鉱山事務所・精錬所・郵便局・診療所・販売所などがあり、後者には役員住宅・坑夫長屋・人夫長屋・合宿所・分教場などがあった。 　大泉鉱山時代は、寿岡に鉱山事務所・選鉱所・社宅などを建設。枡形には採鉱現場事務所・役員住宅・坑夫長屋・売店・理髪店・浴場・診療所・学校（※）などが設けられ、山神社があった。 　最近の地図でも神社・坑口・石段の記号が見られ、かつて集落があったことを窺わせる。往時からの建造物は皆無だが、道路下にあるプールは数少ない明瞭な生活の痕跡といえる。神社跡と思われる場所も訪れたが、階段が設けられた平坦地とコンクリート製の構造物が残るのみ（写真16）。学校跡の特定はできなかったが（写真24？）、1970年代の航空写真に見られる集落北側の長方形の建物がそれか。 　なお先述の「機械場」には、県道脇に雪崩の犠牲者を悼んだ石碑群があり（写真25）、このうち「遭難者之碑」には「大正七年一月二十二十日　此ノ地（古河鉱業所）ニ於イテ雪崩ノ為百五十余名死亡ス」とある。 ※　大鳥小学校枡形冬季分校。昭和53年休校、同54年閉校（HEYANEKO氏調べ）
写真1　坑口方面	写真2　ズリ
写真3　施設跡（粗選鉱場？）	写真4　遺構
写真5　遺構	写真6　鰍沢とプール
写真7　プール	写真8　社宅の石段
写真9　社宅跡	写真10　同
写真11　同	写真12　石段（中央手前から奥）と石積み（右）
写真13　社宅跡	写真14　小橋の跡
写真15　神社前の石段	写真16　神社跡。奥は本殿？
写真17　社宅跡	写真18　社宅跡の石積み
写真19　社宅跡	写真20　社宅跡の遺構
写真21　社宅跡	写真22　社宅跡？
写真23　写真22にて。何かの塔と小屋	写真24　学校跡？
（写真25　「機械場」跡の石碑群）