
TOP > 子供の心に命の息吹を
最近はペットブームで、テレビや写真などに動物の様子が毎日映し出されています。大人達も子供達も動物を可愛く思うのか、視聴率はとても良いそうです。しかし現実には、動物に触る体験を1度も持てないまま大きくなってしまう子供達がとても多いのです。
動物体験の無い子供達は例えば、初めてやっと抱いた小さな子ネコの、とても細い爪が触っただけで「痛い!」と大騒ぎをして子ネコを拒否するようなケースが少なからずあるようです。子ネコが爪を出した原因は、緊張した子供が強く抱きすぎたせいなのですが、彼等はとてもそのような理由を考えるゆとりは持てません。ましてきつく抱かれた子ネコの気持ちまで考えられる訳がありません。もう、子ネコのふわふわの毛も丸い目も、暖かく柔らかい体も、全く目に入らず「気持ちの悪い、痛くする存在」としか思えなくなり、ひょっとしたら動物への科学的・芸術的関心の芽を摘み取ってしまった可能性もあります。この地球上の動物世界を純粋に楽しめなくなってしまったかもしれま せん。
一方、小さい時から昆虫やハムスターや犬・猫に触れて育ってきた子供達は、少々の汚れや小さな傷をものともせず、お気に入りのペットと遊び、安らぎます。また、すぐに動物を傷めずに扱えるように手加減を覚えます。前述の子供達に比べ「生きる力」がついているのです。
10年程前に「死への意識」を調査した中学の校長先生が「可愛がっていたペットと死に別れたことのある子は、その体験のない子供達より自殺を否定していた」と報告しました。また、外国でも大学教授が 「ペットを飼っている少年達の方が、友達から信頼されていた」と報告しています。最近はペットを児童の心理療法に使うこともあり、獣医師から見れば、小学校の時にペットを飼っていた子が、動物を秘密を打ち明ける相談相手とし、後の中学・高校での様々なストレスを、 ペットと一緒に解消していった例は枚挙にいとまがありません。
また最近の調査では「(1)ペットを飼っている子供300人と飼っていない300人との比較では「楽しいこと、悲しいことなど心に残っていることを書き出して下さい」という調査への記入例は、飼っている子供の方が、内容が圧倒的に多く、これは感受性の高さを表わしている。
(2)ドイツでは、8割の家庭で犬を飼っており、親の9割は子供の社会教育のために必要だとしている。
(3)カリフォルニアでは、子供は、動物を飼うことで動物の発する言葉以外のメッセージを受け取る訓練が出来、これがいじめやケンカの相手の「やめて」という信号を受け取る能力を養っている」が報告されています。
しかし現在日本では、様々な理由で子供達にペットを与えない家庭が多く、映像やゲームソフトによる疑似体験などが子供の本能的な欲求を慰めています。しかし、命のないものは、なんの反応も子供に伝えず、 子供の心の襞を揺さぶることはできないのです。命を感じるからこそ、 血の出るような悲しみや涙するような喜びを体験できるのです。
もしも、お子さんが動物を欲しがったら、心を成長させるチャンスです。喜んで子供と一緒に動物を飼ってあげて下さい。西洋には「犬(などのペット)も子供も、親がしつけ、社会化するもの」という考えがあります。ペットを飼えば、親御さんには色々な手間がかかるでしょう。家も汚れるでしょう。しかし、子供を、思いやり深く育て、生きる力をつけさせるのが「親」の役目としたら、やはり子供の動物への興味を断ち切ってはいけません。
子供の成長のためには、ぴかぴかのきれいな勉強机より、いとしいペットを1匹与える方が、よほど意味深いと考えられます。
「学校飼育動物のすべて」 ~子供とゆとりある飼育を楽しむために~
日本小動物獣医師会学校飼育動物委員会副委員長
全国学校飼育動物獣医師連絡協議会
中川 美穂子 監修
発行 株式会社ファームプレス (電話:03-3360-8601)
上記のメッセージは「学校飼育動物のすべて」のあとがきより、ここに引用させていただきました。
学校飼育動物を考えるページも合わせて是非御覧下さい。