サンナンタンランドにロックパイルスを サンナンタンランドにロックパイルスを


 4才になる娘とふたりグラウンドを見下ろせる土手の上に腰掛けて、高校生の野球をぼんやり眺めながら考えた。ここをどこかのプロのチームがフランチャイズにしてくれたらどんなにいいだろう。

 センターバックスクリーン左の向こうの方に海が見える。海の向こうには大島が見える。5月最後の日曜日の午後。今年の春は雨が多かったが、5月も終わりになってやっと見事な五月晴れで、吹く風も心地よい。

 サンナンタンランドとは我が住む町、和歌山県串本の総合運動公園のことだ。串本は紀伊半島の南の端、東西、南の三方をぐるりと海で囲まれた小さな漁業の町で、さすが南国、気候は温暖で冬には雪も滅多に降らない。かといって夏はそれ程暑くなく、大阪や名古屋より気温は低くてとても過ごしやすいところだ。そぐそばに大島が横たわる。大島には歌で有名な「仲を取り持つ」巡航船かフェリーで行き来できる。橋が建設中で、これが来年には完成し二隻の船は両方とも廃止されるという。串本駅から歩いて、坂を上っておよそ10分位の高台にサンナンタンランドはある。ここには野球場の他にテニスコートが8面、400メートルトラックを持ち、サッカーなど多目的に使用出来るグラウンド1面とゲートボール場、そしてやはり多目的の雨天練習場が備わっている。歩いていける距離に「さんごの湯」という温泉もある。またこの4月には球場のレフト後方に13階建てのホテルが完成した。(このホテル、球場からのせっかくのいい景色が見えなくなったことと妙な圧迫感を与えていることは甚だ残念だ)全体にこじんまりとした運動公園ではあるがプロ野球のチームがフランチャイズにするだけの設備は一応そろっていると思う。

 金属バットの乾いた音がする。選手たちの声が絶え間ない。

 妄想はどんどん広がっていく。チームはタイガースかバッファローズがいい。当然一軍は無理だから二軍に来てもらおう。そして、この際いっそアメリカに倣ってチーム名をその土地の名にしてしまおう。その方が町に密着したチームになるだろう。ニックネームは何がいいか?そうだ、串本の名所「橋杭岩」がいい。ロックパイルス。「串本ロックパイルス」でどうだ。もちろんここだけそれだと変だから、ウエスタン・リーグとイースタン・リーグ全チームのフランチャイズとチームの名称を変えてしまえばよい。都市に集中せず日本各地の地方に散らばせる。日本のマイナーリーグが単なる一軍のファームとしてだけの目的にあるのではなく、一軍とはまた違った魅力のあるリーグとしてファンの間に浸透し定着すればどんなにいいだろうか。

 サンナンタンの球場は両翼95m、センター120m、広さはまあ良しとしよう。今は外野にしか植えられていない芝生を当然内野にも敷き詰める。冬でも青々とする品種がいい。ノシバとコウライシバを交配した「ミヤコ」がいいだろう。それからバックネット裏のスタンドをもう少し拡充しよう。一塁側と三塁側の芝生席はそのままでいいか。観客が大勢集まるようならもっと広くすればいい。外野はフェンスだけでいいだろう。夜間照明ももちろん完備する。(それにつけてもあのホテルは邪魔だな。もうちょっと建てる場所を考えれば良かったんだ)

 娘が退屈になってきてガサガサとしだした。日差しが強く私は少し汗ばんできた。

 土曜日と日曜日はデーゲームがいい。私は自転車を駆って毎試合応援に行こう。ウイークデイはナイトゲーム。ゲーム後の飲み屋では時々選手と話をしたりする。

 取り止めなく考えているうちにますます娘ががさつく。そろそろ家に帰るとしよう。