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 朝5時。バラバラと屋根瓦を叩く雨の音で目が覚める。「おぉ…、、今日は久々に雨かぁ…」と私はモウロウとした意識の中で今日の一日を考える。
 朝、あまりの豪雨にそこら辺の状況が心配になり、付近をパトロールする。ここらは田舎なので長年手入れが行われていない山などから落石が頻繁にあり、今日も数ヶ所見つけた。そこで地元建設委員長さんにこのことを伝え、そのまま10時からの工事検査に向かう。この工事は公益団体の工事で、私はそこの下請けだ。そこで元請けの社長さんといろんなお話をし、検査事務所でありながらワイワイともりあがってしまう。そして工事検査も難なくクリアーし、午後、別の工事検査で山奥の現場へ向かう。すると、雨足も強くなりホンマに土砂降りとなってきた。待つことしばし、到着した検査員も土砂降りの中の検査とあって、数ヶ所を計ったのみで早々とお帰りになられた。このところ、工事検査ではこれといった指摘もないのはなぜだろう。以前はことあるごとに、いろいろ指摘を受けたのだが、最近は「…はい、良く出来てます」としか言ってもらえず、自社の能力向上を考えると少しばかり寂しい。
 
 夕方、例の石黒先輩から電話があり、29日に上本町にいい店があるのでそこでメシ食いませんかと私が告げると
「あぁ、そのつもりだよ。しかし、上本町は遠いなぁ。布施にしたまえ。そこの方が私は楽だから。あ、そうそう、「楽だ」と言えば『カンテキホルモン・楽×2』にしたまえ。そうしたまえ。」
と社長机の上に先端の尖ったトラサルディの靴を履いたまま両足を放り上げ、その大きな本革の社長椅子にのけぞったまま左右にスイングされていた。
「そ、そうですね。じゃそうしましょう嶺。先輩も最近お疲れのご様子ですから、近場がよろしいですね!」
と奥歯が浮いたセリフを『これでもかっ說』と言うほどならべ、受話器をもったまま何度もお辞儀をする。

 もうすぐ『ウノシマ杯』だ。
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