12/26
 今日は朝より仕事の打ち合わせが2件もあり、結構な運動となった。それに移動も多いので車のガソリンが見る見る減っていくのがよくわかる。燃料も高騰している中、ガソリンタンクのメーターの振れがちょっとでも動くとハラハラものなのだ。
 夜、帰宅するなやいなや、ユウマの第一声、
聾「おとうさん、アレ来たで。ギター…」
とうれしそうに今日、代引きで送られてきた『はじめてのエレキギター(入門セット)』の伝票を私に見せる。それというのも、ユウマに中学校最後の休みなので、お祝いにエレキギターをかってほすぃと言われ、私も子供にはあまり物を買ってやることもなかったのでネットで買ったワケである。彼はこれがほしくてほしくてたまらなかったのだと言っていた。
 送られてきた真新しいそのエレキギターに興味津々だったのはユウマだけでなく、あろうことか当の私もだった。早速アンプを繋ぎ電源を入れると「ギュイ〜ン」と音が鳴り出した。そこで
「どれ、おとうさんが調整してやる」
と年甲斐にもなくそのエレキを抱き上げた。私、こう見えても専門学校時代には同級生2人と学園祭でミニコンサートなどやったことがあるのだ。そこで、ベンベンと弦をはじきながら調整していたが、先ほどの晩酌でのビールが頭に残っており、なかなか音感が落ち着かない。
「…こうかな、あれこうかな」
と、どんどん弦を張っていくと「ブチッ說」と鈍い音を立てて弦が切れてしまった。
「あ…殮」
とその場で二人とも言葉を失い、とっさに私はその場を取りなそうと慰めの言葉を吐き出そうと躍起になった。すると
聾「おとうさん、大丈夫、予備の弦があるから」
と、もう一本新しいのを出してきた。
「あ、お、そうかそうか、じゃ…」
と速やかにそれと取り替え、長くて要らなくなった弦の端っこをニッパーで「プチッ」と切った。そうして再度調整に入ろうとするが、今度は少し短く切りすぎたらしく、弦がうまく巻き取れなくなった。つまり、ピンと張れない状態なのだ。何度やっても修復出来ない。あとにはもう替えの弦がないことはわかっている。あぁ、わかっているさ…。そうすること15分。見るに見かねたユウマが
聾「おとうさん、今度ボク田辺いくからそのときに新しい弦買ってくるで」
と恥ずかしいかな子供に助け船をだされる。こうなると息子を持つ親として、示しが付かなくなったのは言うまでもない。そのまま
「そうか、ほな頼んだで…」
と疲れ果てた私は下を向いたままゆっくり立ち上がり、力の入らない右手をドアノブにかけ、そのまま彼の部屋から静かに出て行くことにした。
 今日はそういう日だったのだ。
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