■小辺道山行 高野山〜熊野本宮大社
2008年5月3日〜5日(2泊3日)
[オハナOD倶楽部] 5名
愛須 康順(49) ・ 西川 哲司(46)・ 大室 泰典(42) ・ 和田 武晴(41) ・ 竹本 順子(37)
<コース>
[小辺路]
高野山--水ヶ峰--大股--伯母子岳--三田谷--三浦峠--西中--十津川温泉--果無峠--八木尾
--熊野本宮大社
<はじめに>
小辺路とは、高野山から熊野三山へと通じる熊野古道のひとつで、伯母子峠、
三浦峠、果無峠の1000m級の峠を3つも越える全長73kmにもおよぶ厳しい
ルートです。
山好きな私は、夏場信州方面の山々にハイキングに出かけます。
その時に、テント場などでよく熊野古道や大峰奥駈道の話題になります。
地元の人間なのに行った事が無いのもシャクなことから今回の計画を立てる
事となりました。
また、熊野古道の中で唯一人里はなれた紀伊山地の背骨にあたる部分を縦
走するところにも興味が注がれるところでもあります。
一年前の春に計画を立て、年明け早々に募集をかけたところ5名ものツワモノ
が集まった。山歩きが趣味でない人からすると何が楽しくてこんな事をするの
か意味不明なところだろうが、そこは同じムジナと言うかコアな趣味を持った物
同士の集まりであるから、感動を分かち合うこととする。
そして、今回の山行で一つだけ「こだわり」を持った事は、平安の昔より参詣や
旅をした古人は鍋と米を持って辺鄙な山道をひたすら歩いたのだろうと思い、
山行中は全て飯を炊く事をいとわなかった。
おかげで5人全員が食欲旺盛でそのパワーをもらったように思う。
私自身30年も前に、大股から伯母子岳に登ったことがあるが、もう随分様子が
違う様だし、今年で50歳となる節目に歩いておきたかったのが本音のところで
ある。
<熊野古道・小辺路 縦走記録>
■1日目(5月3日) 晴れ 高野山〜水ヶ峰〜大股〜伯母子岳
金剛峯寺で全員これからの山行の無事を祈り、午前8時30分に出発する。
金剛三味院前を右折し、民家のある登り坂を抜けるとろくろ峠に着く。ここで大きな失敗をしてしまった。
女人道の看板につられてミスコースしてしまい、途中、おかしい?おかしい?と思いながら結局は中の
橋に出てしまった。
皆に聞くと戻るのも何なので、このままスカイラインを歩く事とする。ゴールデンウィークという事もあり、
やたら交通量が多い。気温は24度と今年の最高気温となる。
13時10分に水ヶ峰を通過、林道タイノ原線に合流、右手に野迫川村の風力発電のプロペラが見え異
様な感じがする。
もともと小辺路は生活道として開かれた道だったところを、近世に入り参詣道として利用されるようにな
ったと言われているが、現在の小辺路(高野山〜大股)には林道によって破壊されている為、その面影
はない。
前方には伯母子岳の稜線が見えやがて橋の袂に着いた。大きな世界遺産の看板とトイレが目立つ。
バス停で休憩していると近くの旅館から迎えの小型バスが来て、数名のハイカーを乗せて行った。
津田商店で山の情報を聞き、水をもらい出発する。
大股からの登りが今日のメインとなる急登がつづき、補給した3リットルの水が肩に食い込み、暑さと
同時に体にこたえる。
萱小屋では僕達と同じように高野山を出た2人組が荷物を広げ、今日はここに泊まると言っていたの
で思わずつられそうになる。桧峠から途中左手の木の間に伯母子岳が見え隠れする。
護摩壇山から通じる十字路に出て、やっと山頂に近い事を確認出来た。急登を登る事25分でまわり
が開けた山頂に17時9分に立つ。
前には果無山脈、大峰山脈、護摩壇山、そして奥高野の山々が並び、見飽きる事はないが時間が時
間だけに夕食の準備の事も考えて早々に小屋に向かう。
朝から9時間20分の行軍となったこともあり結構体は悲鳴をあげている。日暮れと同時に夕食を済ま
せ、今日あった事と明日の計画を話し合い20時に床につく。
夜中、トイレに出て行った時星がいつもになく大きく見えた。
寝袋の中で何度となく鹿の鳴き声に目が覚めた。(素晴らしい景色に少し興奮した様だ)
▲金剛峯寺前にて記念撮影 ▲スカイラインと水ヶ峯入口 ▲大股に到着 ▲大股から急登が続きます。
▲萱小屋跡で休憩 ▲桧峠 ▲伯母子岳山頂で記念撮影 ▲伯母子峠
▲本日の宿泊地 ▲テントの用意 ▲夕食の準備 ▲熊注意の看板
[水場情報]
金剛峯寺のトイレ。大股のトイレと民家で水をわけてもらえます。
萱小屋と桧峠の途中、左側に谷水あり。
十字路手前の右側に谷水あり。
伯母子岳肩の小屋より5分と10分下った所に谷水あり。
[行程記録]
天候:晴れ
金剛峯寺出発(8:30)〜ろくろ峠(8:47)〜中の橋(10:40)〜スカイラインと小辺路の交差点(12:20)〜
水ヶ峰(13:10)〜平辻(13:35)〜大股(14:17[小休止]出発15:12)〜萱小屋(15:25)〜桧峠(16:12)〜
十字路(16:47)〜伯母子岳山頂(17:09)〜小屋(17:20) [小屋泊]
[地図]
◆ルート地図(和歌山県観光情報のHP 街道マップ) ルートの説明や印刷が出来ます。
高野山〜水ヶ峰
水ヶ峰〜三浦口
◆国土地理院地図閲覧サービス
高野山 ・
水ヶ峯 ・
伯母子岳
■2日目(5月4日) 伯母子岳〜三田谷〜三浦峠〜西中〜十津川温泉
4時起床。何だか寝不足のようだが、天気は良さそうだ。
朝食を摂る頃には、朝霧で抜群の景色が目の前に広がる。多分、この景色に出会う為に苦労して歩い
て来たのだと思う。
今日も朝から飯が美味しい。朝食の後コーヒーを片手に絶景を何度となく見入る。
ブナの新緑の中を気持ちよく下って行く、間もなくすると上西宿あとに着く。そこは大きく開け生活の拠
点であり大きな旅籠だったことがうかがえる。休憩するには適地だ。
弘法大師座像を過ぎ長い下りに嫌気がした8時50分頃三田谷橋に着く。昨日大股で民家を通過して
から半日も経っていないのに、久しぶりに民家に感激した。
三田谷には登山者の為の水洗トイレがあり、世界遺産以来県や村の取組みが良くわかる。
五百瀬トンネルを抜けると、棚田が広がる集落があり「腰抜田」の石碑があり、小辺路が歴史的な街道
であることを実感する。
三浦口から民家の間を通りつり橋を渡り三浦峠に向かう。杉林の中の坂道を登って行くと杉の大木が
現れ中々の迫力を感じる。
三十丁の水で喉を潤し、間もなく開けた峠に出た。残念ながら展望は無く何の面白みも無い峠だ。
小休止をすませ先を急ぐ。下り坂は狭いシングルトラックとなりかなり良い雰囲気の長い下りが続き、
茶屋跡や矢倉観音堂を過ぎると13時45分に西中バス停に出た。
ここからは舗装路歩きとなるが直ぐに「田ノ岡商店」があり、明日朝までの食料を買込み小休止とする。
道草をしながら味気のない舗装路を2時間30分歩き、やっとの思いで昴の郷に着く。
15時45分、まだ時間も早いので、ここで休憩タイムとする。
17時キャンプ場着、全員がテント泊とする。伯母子岳からこのキャンプ場まで標高差が1000mあり、
寝苦しく感じると共に下界が近い事が感じられた。
▲絶景のひと時 ▲最高の景色です ▲新緑の山道を下ります。 ▲上西宿跡で休憩
▲弘法大師坐像 ▲伯母子岳の登山口 ▲しっかりとした案内板 ▲五百瀬のトイレ前にて
▲腰抜田の跡 ▲腰抜田の石碑 ▲船渡橋を渡り三浦峠へ ▲大杉の防風林
▲三十丁の水場 ▲三浦峠 ▲西中の川合神社 ▲2日目終了(疲れた〜)
[水場情報]
伯母子小屋から下ること5分と10分の所に水場あり。
三田谷に水洗トイレ、三浦口の民家、三十丁の水
三浦峠より5分下った所に水場あり。
川合神社前にトイレ、西中からは民家が多く水はもらえます。
昴の郷
[行程記録]
天候:晴れ
伯母子小屋出発(6:30)〜上西宿跡(6:55)〜弘法大師坐像(7:40)〜待平(8:25)〜
三田谷橋(8:50)〜三浦口・船渡橋(9:25)〜防風林(9:47)〜三十丁の水(10:20)〜
三浦峠(11:05)〜出店跡(11:45)〜五輪の塔(12:05)〜矢倉観音堂(12:30)〜
舗装路と合流(12:45)〜西中バス停(13:45)〜田ノ岡商店(14:00)〜昴の郷(15:45)
[キャンプ場泊]
[お役立ち情報]
<お風呂> 十津川温泉街、昴の郷は入浴可能
<買い物>
・田ノ岡商店:0746-66-0116
・田上商店 :0746-66-0015
※十津川村西中地区のお店は日曜日定休日になる事があるため電話にて確認の必要あり
[地図]
◆ルート地図(和歌山県観光情報のHP 街道マップ) ルートの説明や印刷が出来ます。
三浦口〜十津川
◆国土地理院地図閲覧サービス
伯母子岳 ・
三浦峠 ・
十津川・柳本
■3日目(5月5日) 十津川温泉〜果無集落〜果無峠〜八木尾バス停〜熊野本宮大社
まだ薄暗い中ヘッドランプの明かりで朝食の準備をする。今日で3日目と言う事もあり、やっとエンジン
が掛かってきたみたいだ。
朝食を終え出発の準備をする矢先、小雨が降りだした。予定より1日早く降ってきたので、皆大慌てで
身支度をすませ出発する。
つり橋を渡り朝一番の急登の石畳をゆっくりゆっくりと歩く。
振り返れば十津川村の温泉郷が雲の下に見え、果無集落が日本の原風景である事を確認できた。
小雨が降り続くが、山の中では樹が傘の役目となり雨具は今のところいらない。視界は無く、ただ前へ
前へ歩くのみだ。8時45分果無峠に着く頃から本降りとなる。
道端ののシャクナゲが疲れた体を癒してくれる。
七色の分岐を過ぎ、ここから和歌山県に入る。ジグザグの坂道を下ると、眼下にに本宮町がかすかに
見えた。
10時40分まもなく行くと民家があり国道に出た。八木尾から国道168号線を歩き道の駅へ、寄り道
しながら林道を登れば中辺路と合流し、三軒茶屋跡に着いた。
残り道を噛みしめながら歩くと、熊野本宮大社の裏手に着いた。
12時30分神殿では太鼓の音が鳴り響き、無事山行を終えた事に感謝しお参りをすませ、大社の入
口にある鳥居で一礼し小辺路山行は幕を閉じた。
▲つり橋を渡りスタート ▲果無集落と世界遺産の石碑 ▲天水田跡 ▲霧の果無峠
▲霧の向うに本宮の町 ▲八木尾のバス停前 ▲国道168号線に沿って ▲熊野本宮大社に到着
[水場情報]
果無集落の民家に水場あり
果無観音堂 トイレ、水有り
道の駅本宮 トイレ、水有り
[行程記録]
天候:小雨のち曇り
テント場出発(6:00)〜昴の郷(6:15)〜観音堂(8:12)〜果無峠(8:45)〜
七色分岐(10:00)〜八木尾バス停(10:40)〜三軒茶屋跡(11:53)〜本宮大社(12:30着)
[地図]
◆ルート地図(和歌山県観光情報のHP 街道マップ) ルートの説明や印刷が出来ます。
十津川〜熊野本宮大社
◆国土地理院地図閲覧サービス
十津川・柳本・
果無峠 ・
八木尾 ・ 熊野本宮大社
■おわりに
2泊3日の「小辺路山行」を完結することにより、その自然と歴史を肌で感じることが出来た。
小辺路を歩く意義は、熊野本宮大社に来る事では無く、自然と対峙するところにあると思う。
(テントや食料を持って歩かない事には、この自然を感じることは出来ないだろうし、まして、
民宿や旅館に泊まっては見える物も見えなくなり、感じられる物も感じられなくなる様に思う)
また、2004年の夏に世界遺産に登録された「熊野古道・小辺路」を、今回続けて歩く事により、
やっと他の人に説明する事が出来るかと思うとほっとしている。
小辺路の大部分は奈良県に属し、開発と観光化の波をかぶらなっかた個所には、豊な自然が
今も手つかずで残り、古道の風情をかもし出している様に感じた。
<写真 熊野本宮大社>
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■熊野古道・小辺路関連ウェーブ
◆紀伊山地の霊場と参詣道 | 「大峯奥駈道」、「小辺路」の情報があります。コースマップも揃っています。 |
◆金剛峯山寺 | 高野山金剛峯山寺のホームページです。 |
◆野迫川村 | 奈良県野迫川村のホームページです。 |
◆十津川村 | 日本で一番広い村奈良県十津川村のホームページです。 |
◆熊野本宮大社 | 熊野三山の一つ熊野本宮大社のホームページです。 |