目次へ戻る


ブラシカビの1種 Coemansia sp.


キクセラ目キクセラ科ブラシカビ属。
とても美しい形のカビです。土壌から見つかる事が多いようで、糞から出る事もあります。

この仲間は、非常に特徴のある胞子のつけかたをします。短い枝(sporocladia スポロクラディア・ 胞子形成側枝とでも言うのでしょうか)の上に紡錘形の細胞がならび、その細胞から出芽するようにして 細長い胞子をつけます。胞子を出芽する細胞は不完全菌のアオカビ等の胞子形成細胞である フィアライドに似ているので、フィアライドと呼ばれたり、最近は偽フィアライドというようです。

ブラシカビ属の場合、この胞子形成側枝が主軸に沿っていくつも出し、それぞれが短い柄を持っていて、 その先の短い棒状の部分に胞子が並んでいる様子が、ちょうどブラシの様に見えるのでこの名があります。 言葉で説明するとややこしいのですが、実物を見ればよく分かります。

今回見つけたのは、学校の壁に張り付いた糞を培養したときのものです。多分、アマガエルのものでは ないかと思います。



これはマクロの接写ですが、良く見ると主軸から出た枝がずらっと並んでいるのが分かります。胞子を着けるのは 軸の先の方だけで、それより下の方は長く伸びて、所々で枝分かれをしています。



顕微鏡下で見るとこんな感じ。小枝の先が折れ曲がって、その外側に水滴が着いているのが分かると思います。 これは、胞子が熟するとこの水滴の中に放出されます。Wet soporeというやつです。軸の先の方には水滴が 着いていなくて、未熟な胞子が見えますし、一番先のものでは胞子が出来ていません。
水滴の並んだ枝は、龍が玉を掴んでいるようにも見えます。
全体として、ちょっと高等植物の様な、でも他に似たものがないようなきれいな姿です。




糞の上から一部を取って、プレパラートにしてみました。ちょっと重なっているものもあるのですが、 全体の形が分かると思います。軸の先の方へとだんだんにスポロクラディアを作るので、一番先のものは、 この枝ではまだただのふくらみになっているだけです。
軸の方を見ると、規則的に隔壁があります。この仲間は接合菌の中でも規則的に隔壁のある菌糸を もちます。それと、ちょっと分かりづらいのですが、核壁の真ん中にはパイプの様なものがあって、 これもこの仲間の特徴とのこと。




ちょっと拡大、今一つごちゃごちゃした写真ですが、ブラシに見えると思います。胞子は細長い紡錘形で、 出芽的にできますので、外生胞子の様ですが、これが実は胞子を一つだけ含む分節胞子嚢なのだそうです。
右側は胞子が落ちてしまった様子。




拡大すると、少しだけ偽フィアライドが見えます。また、スポロクラディアに節があるのが分かります。 ここだけ見ると、えびの尻尾のようにも見えます。

ブラシカビには10数種が記載されてるようです。この写真のものは、胞子の長さが8μほどと小さく、 C.electaではないかと思いますが、どうも確信がもてません。分離も失敗したから、判断は 避けておきたいと思います。



目次へ戻る
表紙へ戻る