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クスダマカビの1種 Cunninghamella elegans


クスダマカビ科、クスダマカビ属。
分生子をつけるケカビ属の代表かつ最普通種の一つ。クスダマカビの和名は、属単位でついてると思う ので、これがその名でもいいんだけど、多分、C. ehinulataの方がそっちになるのが順当なのではないかと。 無理につけるなら、ヒメクスダマカビとかがいいんじゃないかと思います。

割と普通種のはずなんですが、ここ数年僕の手元では見つからなかった。さぼってただけとも言いますが。 そしたら、今年のセンターのカビ観察会で参加者の方が培養してしまいました。中学生の女の子とお母さん の組みの方でした。お母さんがずいぶん乗り気で、自宅のある部屋の壁のシミのカビを見たいと仰ったので、 それなら培地の入ったシャーレを持って帰って、部屋の壁のかけらとか部屋の埃とかを入れてみては、と 説明したところ、部屋の埃を入れてみたのだそうですが、これが大当たり。アオカビやクラドスポリウム、 それにアルテルナリアと目立つ不完全菌が出た上に、これが出てました。そこから少しいただいたのが この株です。



非常によく気中菌糸を出します。寒天倍地の中を菌糸が伸びるのを追い越すように伸びて、先が寒天につくと そこから仮根が出ます。それにその先にどんどん胞子をつけます。菌糸は太くて木の根のように枝分かれした、 ケカビ類の典型的な姿です。

胞子は気中菌糸の先端の膨らみ(頂のう)から、その表面一面に出ます。外生胞子なのでこれを分生子と言う わけですね。この属の特徴として、分生子の表面には多数の刺があるのですが、この種はそれがほとんど 目立たないのが特徴。代表種のC. echinulataでは、低倍率でもはっきり刺が分かります。それとこの種の方が 一回り小さい。C. echinulataはこんなです。



分生子柄の枝分かれは、まず菌糸先端に大きい頂のうが出来ると、やや下側から側面に何本かの枝が出て、 その先に少し小さい頂のうが出来ます。そのまた横枝が、という例もあります。


倍率を上げます。分生子はやや褐色を帯びて見えます。出来かけは透明で小さいのが一面に。




この分生子は、本当は胞子のうの中の胞子が1個だけになったもの、もっと言えばその根元から外れるので、 小胞子のうの胞子が1個だけになった、単胞子性小胞子のうであろう、ということです。ただし、どこを見て もそれらしくは見えませんね。

ちなみに、さっきの拡大写真は倍地にカバーガラスをかけて見たもの。プレパラートを作ると、封入液を流した 時点でほとんどの分生子が流れ落ちてしまいます。あとには分生子の付着跡だけがいがぐり頭のように残って 見えます。






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