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ヤワラスゲ
Carex transversa


”柔らかいスゲ”ということでしょうか。さほど柔らかいわけではありませんが、若いときの姿は、 確かにみずみずしくて、似つかわしい名前です。水気の多いところによく見られるようです。
湿った道端や木陰で見かけますが、森の中では見ない気がします。



2003年5月5日 田辺市水上


さて、それでは採集をしようと、でかけたのがすさみ町太間川。水のそばの岩の上にはナルコスゲ、 河原にはタニガワスゲ、その上の草の生えたところにヤワラスゲの大株が見つかりました。 2004年5月24日です。



葉の間から、長く穂が伸び上がっています。一番長い穂では、すでに果胞が落ちてしまっていて、 2番目の長さの穂の先に、熟した小穂が見られました。
引っこ抜いて持ち帰りました。



のばしてみると、意外と大きい。根出葉も、短いのかと思ったら、茎に負けないぐらいの 長さがありました。



きっちりした株立ちになっていたので、根茎が這ったりする事はなさそうに思ったのですが、 こうしてみると、少し伸びているようです。これは、河原で、砂が堆積するのと関係があるのかも 知れません。根本の鞘は少し色づいていました。



穂には、とても長い葉がついています。小穂には、ほとんど柄がありません。



果胞が大きくて嘴があるので、肉眼でもイガイガに見えます。
それから。普通は先端に雄小穂があるのですが、この株では見つかりません。どうしたのかと 思ったら、先端の小穂の下半分が雄花。先が雌花という構成になっていました。いわゆる雌雄性の 小穂です。アゼナルコのが有名です。
先端の小穂(頂小穂)の性別、つまり雄性か、雌雄性かというような特徴は、種類を見分ける ときにも重要なのですが、同じ種内でも変化する事が結構あるようですので、これもまたありなの でしょう。



果胞と果実です。なかなか堂々としたものです。

ところで、図鑑によると、ヤワラスゲの特徴の一つに、乾燥すると果胞が黒くなる、というのが あります。この標本はどうだったかと言うと、3日目にしてこうなりました。





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