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タチスゲ
Carex maculata



水辺に生える、淡い色のスゲです。
かわいそうに、保育社の図鑑には図が出て来ません。結構普通種なのに。
それで、初めて同定したときは、結構てこずりました。しかし、分かってみれば、分かりやすいスゲでは あります。全体の色が粉を吹いていて、しかも青みを帯びて翡翠色と言ってもいいような美しいものです。

常に水辺にあって、ほとんど水に浸るようなところが好きで、ですから、ゴウソとか、アオゴウソとかと 大体一緒に出ます。



写真にしたのは、田辺市の天神崎にある、水田跡地です。天神崎は、知る人ぞ知るという、かの、日本のナショナル ・トラスト運動発祥の地(の一つ)です。平らな岩礁と、その背後に比較的自然の残った低い岩山が一まとめに、 興味深い生物観察の好適地を形成しています。
岩山の間には、水のにじみ出る場があり、かつてはその水を頼りに水田が作られていました。時代の流れの中で 水田が放棄され、ちょっとした湿地になり、アカバナやハンゲショウが咲き、カスミサンショウウオが産卵する、 なかなかの良い観察地になりました。しかし、次第に泥がたまり、水面もなくなって来たため、湿地としての状態を 維持するため、昨年(2003年)に少しあちこち掘り下げて、水面を作るようにしました。
今年、そこを見に行ったときに撮った写真です。2004年5月1日。

見ての通り、白い粉を吹いたような淡い緑色に、小穂がどれも上を向いています。



引き抜いてみます。匍匐枝はなく、株立ちになります。根本の鞘は長めで、薄茶色になってるところもあります。




穂の部分を見ると、どの小穂も細長い円柱形で、柄が付いています。特に、一番下の雌小穂は、とても長い、 ほとんど雌小穂の倍もあるほどの柄が付いていて、しかも、真っ直ぐ立っているのには、ちょっと驚きました。



雄小穂の鱗片と、雄小穂の基部です。ちょっとだけ鞘のようになっています。



雌小穂の基部と、先端です。先端には、少し雄花がありそうです。



もう少し拡大すると、果胞の表面に細かい粒々があるのがなんとなく分かります。



果胞は意外にふくれたような感じで、でこぼこでした。

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