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シオクグ
Carex scabrifolia
海岸性のスゲです。特に塩性湿地というか、干潟の奥の方というか、泥のところに生えます。内湾の奥の方
とか、河口の汽水域などですが、たまには砂浜にも出ます。砂浜には、近縁のコウボウシバが成育していて、
この両者は特徴もよく似ています。シオクグの方が格段に背が高いので、見分けは付くはずですが、背の高さ
は条件によって変わりやすく、コウボウシバが生えてるような場所に生えているシオクグは、たいてい背が
低くて、一見コウボウシバのように見え、結構やっかいです。
和歌山県では、シオクグはあちこちに生えていて、たいていは群落をなしています。一面に生えて、遠目には
背の高い芝生のようになります。
御坊市の日高川河口にで掛ける機会があったので、そこで採集して来ました。ここは、河口にアシの生えた
干潟が発達し、岸部にはハマボウの群落があって、天然記念物に指定されています。
シオクグは、アシの群落の中で、その下生えのような状態で生えていました。どちらかといえば、海側に密生して
見られました。
抜いて来たものは、当然泥だらけですので、洗って広げたのがこれ。背が高いスゲですが、葉は根出葉としては、
高い位置から伸びる形です。
根元を見ると、鞘が少し赤みを帯びています。地下茎はよく横に這うようですが、それほど長くはならず、密集
した群落を作るわけですね。
花柄の先端には、雄小穂があります。先端の奴は細長い棒状。根元に、第2の雄小穂が見えます。複数の雄小穂を
もつのは、コウボウシバとも共通で、スゲの中では例が多くない特徴です。
雌小穂は全体の形がどうこうと言う前に、果胞がとても大きい。もう少し短くまとまっていたら、ミクリとどっこいと
いう感じです。実際には、花胞はみんな上を向いているのですが。小穂の基部には、葉状の包があります。
あんまり大きいので、ちょっとはみ出しがちですが、双眼実体顕微鏡の下に移します。
そのために雌小穂を根元からはずしたところ、基部に、褐色の鞘状に前葉らしきものが。
小穂あたりは入らないので、とにかく果包を一つ取り出してみました。ご覧の通り、ツヤツヤで脈が多く、細長めのドングリ
といった感じです。
果胞の皮をはいでみて驚きました。果胞の皮がとても厚く、しかもそれがコルクの様な多孔質になっているようです。どうも海流に
のって散布されるようになっている様子、海岸植物ならではと言えましょう。
果実は、すべすべでした。
2005年5月
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