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ナルコスゲ
Carex curvicollis


必ず渓流のそばに出る種です。その点ではフサナキリスゲと共通しますね。
図鑑を見ると、”山地の谷間に…”などと書かれていますが、この点は疑問です。少なくとも、 和歌山県南部では、標高50mでも、山間の渓流ならば出現します。もちろん、もっと標高の高い ところにも生えています。むしろ、きれいな水のある渓流的環境が必要なだけだと思います。


2001.04.12 すさみ町


ちなみに、田辺市秋津川にある備長炭公園付属のビオトープでは、そばを流れる用水路の壁面の ブロックの隙間から生えて来ました。それなりに順応力もある様子。
2002年4月28日・秋津川

さて、すさみ町太間川では、河口から5kmもはいると、すぐに木々に包まれた山間の上流域になります。 もっとも、大部分は人工林なので、照葉樹林は部分的にしか見られません。
それでも、点々と集落はあるものの、水はきれいで、初夏にはゲンジボタルがたくさんでます。 水辺の岩や石組みの隙間には、あちこちにナルコスゲが生えています。標高は50mそこそこ。

2004年4月13日に採集にでかけ、ひと株取って来ました。で、あちこち撮影して、出来た写真を見ると、 写りが悪すぎだったので、野外写真だけ、16日に撮り直しました。それで、拡大写真と野外写真は 別の株です。


あらためて全体の姿です。小穂はややぶら下がるような姿で、これを鳴子に擬えての名前だと聞いた 気がしますが、それは無理がある気がするなぁ。
大きな株立ちになります。匍匐枝は出ないようです。
水際にこんもりした株を見ると、いかにも涼しげです。葉の色が艶消しの黄緑色で、柔らかそうなのも、 一役買っているようです。



小穂を拡大すると、えらく細長く突き出した果胞がたくさん見えます。雌小穂は細長く、細い軸から しだれるようになっていますが、雄小穂は太い軸の先に、短く真っ直ぐ突き出しています。 何だかちょっとおかしな感じです。こんなに雄雌小穂の格好が違うのも珍しい気がします。



双眼実体顕微鏡で見たところ。左は、小穂が軸から出るところの包で、まったく鞘がありません。
右は、雌小穂の拡大です。たくさんの果胞の先端が伸びて、反り返っているので、とげとげに見えて います。

果胞を取り出してみると、やっぱり細長い。特に、本体から突き出した部分、嘴(くちばし)が 本体より長いくらいです。鱗片は短くて、本体の半分くらい。やや紫色なのが、良いアクセントに なっています。
切り開くと、中に果実が見えます。



これが果実です。柱頭は根元ですこし細くなっていて、そこから長く伸びています。



とにかく、あちこち細長いスゲでした。
2004年4月

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