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モエギスゲ
Carex tristachya


道端にごく普通のスゲの一つです。山道の道端、畑の周辺など、普通に見られます。ただし、畑に出て来るとかは 余りなく、アオスゲほどには撹乱に強くはなさそう。それに、森の中に出ることも少ないです。

かなり花時期の早いスゲです。花時には、葉もそれより長い花軸もピンピン立っている様子が特徴的です。また、軸の先端に束に なって着いている小穂が、雄小穂、雌小穂ともに棒状で、まるで広げた十徳ナイフと言うか、物差しの束と言うか、 何かそんな感じなのもおもしろいです。


2004年4月・新庄町にて

ただし、果実が熟するころには、果胞がずいぶん膨らみ、そのために雌小穂がもこもこになるので、見た目がずいぶん変わります。

なお、形質にはやや変化があり、ちょっと見でモエギスゲと判断するところまではいいのですが、よく見るといろんなのがあって、 ちょっと悩ましいです。それに、変種のヒメモエギスゲと言うのがありますが、これが今一つ分からないです。ちなみに、この変種を 別種とする説もあるようです。

今回の写真は2005年5月12日、白浜町の椿の山道沿いです。雑木林の間の道端の、木陰にヒカゲスゲなどと共にありました。
花時より花軸が伸びて、倒れ掛るようになっています。葉も伸びて、細長くなっています。


株一つ、抜いてみたところです。匍匐枝はなく、株立ちになります。根元の鞘は黄褐色。葉よりも花軸が長くて、緩やかに曲がって 伸びています。


で、この花軸の先の小穂の配置なんですが、結構変化があるんですね。別の株についていた花軸3本を、根元近くでちぎって並べて みました。


真ん中の長い奴がほぼ標準と思われます。先端に雄小穂、その根元に数個の雌小穂が集まっていて、少し下の方に、1つだけ雌小穂が 離れて着いている形です。一番下の雌小穂は、長い柄があって、他の小穂並の位置まで伸びています。また、その根元には包があって、 長い葉状の部分があります。
しかし、その上下のものには、最下の離れた小穂はなく、全部が先端に集まっていす。また、下の2つは、雄小穂が特に長いですが、 上のものはそれが短いです。これは、どちらかというと、雄小穂と雌小穂が、それほど差がないのがむしろ普通のようです。

ほかにも、ちょっと変なのもあります。


これは、2004年4月13日に近いところで採集したものの穂ですが、先端部に小穂が集まり、最下のものが少しだけ離れています。そして、 よく見ると、先端に集まった雌小穂は、それぞれ根元で分枝しているのです。従って、花序の形としても、寸の詰まった総状とは言えな くなりそうです。


とにかく分解を始めます。最下の小穂の軸の基部には、薄い包状のものが。
雄小穂は鱗片がきっちりとならんでいます。鱗片は頭が丸く、中心部が緑色、周辺はやや茶色。 この鱗片が軸周りでゆ合して、コップ状になるのがヒメモエギスゲだとのこと。で、これはどうかというと、コップ状ではありません。 が、よく見ると、両端がゆ合してはいるのですね。このゆ合部がもう少し深いのもあります。


雌花の方です。鱗片は果包よりちょっと短め。果胞はやや外向けに反り返ります。ここでおもしろいのは、雌小穂の根元、浅い鞘の上から 前葉の先端が覗いています。シミチョロと言う言葉がありましたが、なにやら下着の端が見えているような。



果胞1つをはずしました。鱗片は丸っこく、雄小穂のにちょっと似ています。果胞には毛が生えています。
果実には、てっぺんにはっきりした帽子がありました。それと、基部が急にすぼまって、ちょっと柄のようになっています。


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