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コカンスゲ
Carex reinii


ある所では一面に生えます。和歌山県だと、内陸部の暖帯上部、標高600mくらいかな?の照葉樹林に属する森林ですが、 アカガシとかの森林の林床とか、もっと高いところ、ブナ林のスズタケの切れ目とか、そういう林床にたくさん生えている ところがあります。でも、はるかに標高の低いところでも見掛けることはあります。低い方は200m位の所も知ってます。そういうところでは、 むしろ傾斜の強い、水際の崖っぽいところなどで見掛けることが多い気がします。

特徴は多いです。葉は細くて硬く、非常にざらつきますし、匍匐茎をよく出しますし。それだけでも一応判断できそうなくらい ですが、穂が出ていれば完全です。なにしろ小穂それぞれに棒状の派手な雄花部がある雄雌性の小穂ですから。言葉だけなら ナキリスゲ類と共通の特徴ではありますが、季節も違う上、派手に突き出した果胞は見間違えようがないほどです。

2005年6月4日の写真です。護摩段山の山頂そば遊歩道、ブナ林の中のなだらかな尾根に生えていたものです。何しろもっと低い ところでは、もうすっかり落ちてしまっていますので。


スズタケが密生する林ですが、その切れ目の遊歩道沿いに生えていたものです。穂は長く伸び、大きくしなだれて、小穂を ぶら下げるようにつけています。ところがこいつが標本にすると果胞が全部こぼれ落ち、今年も写真はあきらめかと思ったところ、 6月12日、同じく護摩段山、山頂近くの林道の沢になったところに、まだ残っていた穂を見つけ、持って帰ったのがこれ。


株一つ、掘って洗って広げたところです。穂の長さが特に目立ちますね。カンスゲやヒメカンスゲは穂がそんなに長くない。 コカンスゲは飛び切りです。類縁はあまり近くないみたいだから、これはまあ当然かも。でも、根元の鞘の様子なんかは、 結構カンスゲっぽいです。似てるからこそのこの名前でしょうが。


小穂一つを見てみます。どの小穂も、先端に棒状の雄花部があり、基部に雌花部がある雄雌性で、長い柄があります。で、 その柄は細くて小穂は垂れます。小穂の柄の根元には鞘があって、鞘にはほとんど葉状部がありません。これもカンスゲに 似ているところ。


果胞を剥がすと、若干未熟な果実が出現。根元に太い柄が区別できそう。




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