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キノクニスゲ
Carex matsumurae


絶滅危惧種II類に指定されている希少種です。当地では、南方熊楠にゆかりの神島(かしま)に たくさん生えているのが有名ですが、他にも何ヶ所か生育しているそうです。
海岸林の林床にはえます。

神島は上陸禁止になっていますが、この春、上陸できる機会があったので、見て来ました。 2004年4月11日です。海岸林の下の平坦地を中心に、一面に生えていました。匍匐しは 出しません。
植物そのものは大柄ですが、5本も10本もの茎が集まったような、大きな株になっているのは 見かけませんでした。それぞれの株が数本の穂を出していました。



全体の感じは、カンスゲに似た感じですが、より柔らかくて、黄緑色です。もっと硬くないと、 海岸には向かないような感じです。でも、、実際には一部の株は森の外に顔を出していて、直接に 潮風をかぶるようになった株までありました。



根元を掘ってみると、地下茎は、さほど深くまでは入っていないようす。根元の鞘は淡い茶色で、 少し繊維に分解しています。

すでに花は完全に終わり、ほとんど果実が熟しているようでした。雄小穂は変にかすれたような色で、 こう言っては何ですが、何だか汚れているのかとおもったのですが、これがもともとの色の様子。
雌小穂は円柱状で、結構太い感じ。緑色です。ただし、実っていないものが案外たくさんあり、きれいな 円柱になっていないのも多かった気がします。



さて、細かいところを見たいわけですが、何しろ神島は”草木1本持ち出してはならん”と言われて おりまして。

では、そう言うわけで、あえて名を秘す某場所から、穂を1本持って来ましょう。
どこへ行っても珍品ですので、もう本当に、穂1本だけと言う事で。



穂が少しゆがんでいますが、全体に緑色で、鞘等にも色が着いていません。
包にはほとんど葉が着いていないし、とにかく飾り気がありません。
雄小穂は、ちょっと枯れが入っていますが、どうも真っ白だった模様。



果胞は、緑でつやつや。表面もつるつる。口元がちょっととがって、少し凹んでいます。



果胞の壁を剥がすと、壁がかなり厚く、中に余裕がありそう。果実は色づいていましたが、 あまり透けて見えませんね。



果実もつるつるでした。

どこをとっても、濃い色の部分が少なく、化粧っ気がないと言うか、素心とでも言うか、上品な 色使いと言うか。姿はさほど優雅とも思えませんが。

2004年5月

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