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フサナキリスゲ
Carex teinogyna


生育環境がとてもはっきりしています。必ず渓流のそばなんですね。特に、小さな滝のあるような岩のところが 好きのような気がします。そういう点では、ナルコスゲによく似てるかもしれません。
田辺市近辺では、気絶峡から上流にはたくさん生えています。秋津川のビオトープのそばの渓流の岸にも ありました。採集は 2003年10月7日。



ここは、比較的なだらかな水辺です。特に今年の台風で周囲の土が流されています。
穂が葉と一緒に寝てしまっていて、この写真ではわかりづらくなっています。



花茎は葉の長さとさほど変わりないくらい。匍匐枝は出ません。根元からは新しい芽が出ていました。
この写真では、洗い立てで、色がわかりづらいですが、褐色の繊維が若干出ているようです。



小穂はいわゆる雄雌性、つまり一つの小穂で先端部は雄花、下の方は雌花になっています。これはナキリスゲ類では 当たり前でも、スゲとしては少ない形。また、節ごとに小穂が1つだけではないのもナキリスゲ類ではありがちなこと のようです。ただし、一つの節から、一人前の小穂と、短めの小穂がいくつか着く、というのはこの種の特徴のようです。 そこが”房”菜切り菅という名前の由来らしいですね。



小穂は先端に雄花があるものの、あまり目立ちません。何より目立つのは、表面にまとわり着いている茶色の ひもでしょう。これが全部めしべの柱頭らしいです。はじめはこれが”房”なんだと思っていましたね。



果胞を一つ見てみると、とにかく柱頭が長い。ついでに果胞も長い。それと、鱗片も長くて、果胞より長いよう です。果胞には褐色の毛がはっきり見えます。それと、口に2歯があるのが見えます。



果実を取り出しました。やっぱり長かった。隅々まで流れに逆らわないようにできているんですね。
というのは冗談ですが、なんだか色っぽいのと、花柱の根元がちょっとふくらんでいるのが目立ちました。

2003年10月

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