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ヒメゴウソ
Carex lenta


春に湿地に咲くガラの大きいスゲとしては、この地方では一番普通に出るものです(多分)。名前はヒメゴウソ以外に アオゴウソということもあります。いずれにしてもゴウソに似てる、ちょっと小さい、とか、青みを帯びてる、とかの 意味でしょうが、当たっていないことはないけれど、細長めの小穂は、むしろアゼナルコの方が似ていそうです。

放棄水田とか、沢沿いの日向等に、大きな株を作っています。大きいのは、一抱えもあるのがよくあります。高さの方は、 背丈ほどにはなりません。

標本はゴウソ等と同じく、田辺市天神崎の手入れをした湿地です。 溝にそっても出てますし、以前は廃田に株がありました。今は掘り返してあるのでなくなりましたが、そのうちまた、 次第に進入するのでしょうね。2004年5月1日。



この株は、背丈はあまり高くない方でした。花着きは大層よく、見ての通り。花茎の最先端の小穂は、雄性なのが 一応は本当だというのですが、結構ばらばら。



根元は色の薄い茶色の鞘に包まれています。匍匐枝は出ません。



頂小穂は一応普通は雄小穂のようですが、けっこうばらばらで、写真のような雌雄性とか雄雌性やら、中には 雄雌雄性とか雌雄雌性などというわけの分からないものも出ます。 ただ、アゼナルコはほとんど必ず雄雌性に出ますが、そういうことはないようです。



雌小穂は長い楕円形、細い柄で垂れ下がるようすもゴウソに似ていなくはないです。



さて、実態顕微鏡にかけます。雄小穂は多数の淡褐色の鱗片に包まれ、その芒があち こち出っ張ってます。先端に雌花部のあるものも見ましたが、この通り唐突な連結ぶり。



雌花の方は、こちら。果胞は全体に細かい突起に覆われた感じで、やや淡い緑。扁平で、すこし 膨らんでいるのもゴウソに似てはいます。鱗片はやや小さくて、はっきりとした芒が見えます。
これ、実はちょっと悩んだんですよ。というのは、この果胞の形。保育社の図鑑のものとやや 違うんですよね。すこし嘴があったり。形だけだと、むしろアゼナルコに近いです。それで、 実はアゼナルコを取って来てそのあたりを確認したんですが、やっぱりこれがヒメゴウソらしい。 よく分かりませんが、何しろ変異が多いらしいですから、そのせいにして置きたいと思います。



果胞の裏側と、鱗片を外した様子です。



果実は、丸くて平たい、ちょうど果胞の形を一回り小さくした形で、大きく回りに空間を取って 入っていました。


2006年7月

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