ひき岩群
田辺市の市街地から、北にほぼ5kmほどの稲成町の丘陵地に、奇妙な形の
岩山が並んでいるのがひき岩群です。これは水平に堆積した地層が斜めに
傾いて削られてできたケスタ地形というもので、堆積した面の表れた南側は
なめらかな斜面となるのに、北側はほぼ垂直な崖となっています。そのため、
遠くから見ると大きな蛙が折り重なったように見えるのでこの名がついたとか。
その昔、田辺に住んでいた大博物学者の南方熊楠は、ひんぱんに
この地域を訪れていたようです。今でもこの付近ではなかなか珍しい
生物がいろいろ見られます。標高は100mにも満たない半ば裸の岩山ですが、
そこに踏み入ってみると岩の間には狭い谷があり、岩からしみ出した水は
小さな湿地や滝をつくり、実に複雑な環境を作っています。少し前までは
主に松林に覆われていましたが、まつくい虫の被害で多くの松は枯れ、松を交えた
陽樹の木立とコシダやウラジロの茂みに覆われています。谷間の窪地では低地性の
照葉樹林が回復しつつあります。
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