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ビオトープについて


ビオトープとは?

 ビオトープとは、生物環境を整備して、かつて身近にいたいろいろな生き物を 呼び寄せようというこころみです。
多分、近年までの開発や環境整備事業が、その場所にもともと生きていた生物たちの 住み場所を奪い、身近な生き物の姿を見ることがどんどん少なくなって来たことへの 反省でしょうか。そう云った生き物の住める状態を作ることで、彼らを呼び戻そうと いうこころみがそうよばれているようです。特に、浅い池を中心にした、トンボや メダカがいるようなものがよく作られるようです。

なぜ、今ビオトープか?

 一見自然が豊かに見えるこの地方でも、数十年前と比べれば、見られなくなった 生き物はたくさんあります。特に、人里の水回りは徹底的と言っていいほど変化 しました。水田やため池には、昔はさまざまな水草がはえていて、カエルや 水生昆虫がたくさん住んでいたものです。しかし、そのほとんどがいまや 探すのもたいへんな状態です。たとえば、私の母の世代は、田んぼのあぜ道で 産卵するタガメをいくらでも見ていますが、私は見たことがありません。私の 子供時代の田んぼには、タイコウチやコシマゲンゴロウしかいませんでした。 そしてそれらを現在の水田で見つけることはほとんど不可能です。
 たとえばタニシ。そして、いつの間にかレッドデータブックにのってしまった メダカ。同じく、ごくありふれた水田雑草であったスブタ・ヤナギスブタ・ミズオオバコ といった水田雑草が知らぬ間にレッドデータブックにのっているのです。
それは身近な自然環境がいつの間にか荒れ果てている、ということです。 そして、これはその通りに身近な自然の荒廃という問題でもありますが、 同時にそれらは当時の子供たちの大切な遊び相手でもあったのです。すこし前までは 子供たちは田んぼでおたまじゃくしをすくい、泥まみれで遊んでいたのではないでしょうか。 それができる子はいまや少なくなっていませんか。そう云った生き物との触れ合いが 子供に与えて来たものは、とっても大きなものだったのではないでしょうか。ビオト−プを 作る理由の一つがここにあります。

  田辺市のビオトープについて

 田辺市は、秋津川地区にビオトープを建設しました。ここは、山と渓流があり、 そこに休耕田を利用して池を作れば、三つの環境が隣り合った場所ができます。
休耕田を掘り下げて池を作るのは難しいことではないでしょう。
 カエルや昆虫はそういう場所を作ってやれば、勝手にやって来ます。 しかし、水草や魚はむこうから歩いて来るわけにはいきません。特に、水草については、 いまや日本自生の水草は全国的に壊滅状態です。探して持ち込まねば向こうから やって来る可能性はありません。また、そのような植物の住み家を作る、と考えれば、 これも意義のあることか。
というわけで、スタッフがあちこちから集めて持ち込みました。 これについては、賛否の分かれるところです。つまり、水草の進入を自然に任せるのが ビオトープとしては正しい。植物持込・植え込みは水族館だろう、といわれればその通りで、 かといって、自然進入が期待できない。
当初に関係する数名で相談したとき、今回の場合は今あるものを保護するのではなく、 新たに作るものであり、すでに周囲の環境からそのような生物はいなくなっていること、 また、現地の地理的な条件からも、自然にまかせてもうまくいかないだろうこと、 それに、求めるものが人里的な自然の姿である以上、ある程度人手を加えることは どのみち必要であることなどから、生物を持ち込むことについて以下のような 申し合わせをしました。

1:持ち込む生き物は地元か、その周辺のものに限る。具体的には、せめて和歌山県の南部より 外からは持ち込まない。
2:持ち込む場合にはいつ、どこから持ち込んだかを記録すること。

そして持ち込むものは、この界隈の池なら出て来そうなものとし、それが育つかどうかは 運を天に任せる。ただし、あんまり一種の植物が面積を占めたり、水面を覆いつくすと まずいので、そういった手入れはする。そんな感じで見守りつつ、これまでやって 来ました。




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