水辺の楽校(和歌山県大塔村鮎川)

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大塔村鮎川付近の富田川 2001年開設。富田川の河川敷を埋め立ててグラウンドなどの続きで 公園にメダカ池などを設置。ビオトープとは言っていないかも。でも、 メダカと親しむ池で子供をメダカ放流などの行事に参加させているからには、 まずその手の代物であるが、これは極めて杜撰な計画である。だいたい河川 敷は、そもそも増水すれば水が通る場所で、そんな場所に芝生やメダカが にあわないのは当然だろう。何を建設しても、増水時には必ず泥をかぶる 場所である。
芝生と植木
 そこに作られているのが、まず芝生を配置した平面的な公園。芝生を 維持するにははかなりの水を必要とするだろうが、かんかんでりで、 しかも通常の水面からはかなり高く盛られた河川敷で、人間が水をやる 以外に、それを満たす方法はないのではないか。それを行う仕掛けは 見当たらないが。植えているのはアジサイ、イロハモミジ、サザンカなど。 河原に植えるような代物か。
メダカ池
 池本体は直径10数メートルの円形の物が大小二つ。周りを コンクリートでかため、コンクリート表面には石を配し、池の 中にも石を配置。自然っぽく演出しているつもりらしい。底には泥を 入れ、タガラシやミズハコベなど水田雑草を入れてあった。また、 ガマを植え込み、ホテイアオイが入っていた。メダカは赤、黒、白。  まず、メダカは本来黒である。赤・白は鑑賞用の品種であって、それを 放流するのがまず問題だ。ホテイアオイもそう。外来種をこの様な開放的な 環境に入れてはいけない。まあ、実際には今更ではあるが。
 池の設計で、特に納得がいかないのが深さで、全面が10cm以下である。 これではメダカはたしかに暮らせるけれど、たとえば渇水、たとえば天敵の 攻撃に耐えられるか?何もないところに池を作るなら、深みは作れるはずで、 それを考えないのは、設計者に生物に対する配慮がない事を伺わせる。 すこしでも池や溝で魚などをすくったことがあれば、水中の動物が どれだけ物陰やわずかな深みに集まるかを知っているはずなのだが。
もう一つ、池の周りの水面の当たるあたりがなめらかなコンクリートで 仕上げられているのも気にかかる。水棲昆虫などでは幼虫が地上にはいでて さなぎになったり、水ぎわで産卵が行われたり、水中と地上を行き来する ものがかなりある。この構造だと、それらの生物が暮らすのは困難だろう。 苔や草の根や泥がたまることも期待しにくい。
 なによりも、河川敷に池を作るのがおかしい。河川敷は、川の一部であり、 しかも場合によってはもっとも強い流れを受けなければならない場所である。 しかも、その本流は鮎が泳ぎ、すこし上流ではアマゴさえ出て来ても おかしくない清流の河原にメダカを泳がせる発想がそもそもおかしい。
これが支流の一部が深みになったところで、オイカワなんかが泳ぐ場所なら まだ分からなくもない。 もしメダカの泳ぐ池が欲しければ、河川敷ではなく、その上の道路より 高い位置で、支流の水の流れ込む場所に作るべきではないだろうか。 そのような場所は探せるだろうし、何よりも地元の人々は、もともと メダカがどこに泳いでいたかは知っているはずだ。それを大切にしない 結果が、今のこの施設にある。  これからの大雨何回目かで、この施設は空っぽに なるはずだ。その時もう一度メダカを放しにゆくのか?芝生を掃除するのか? 後の維持が難しいのは明らかだ。どれだけの金がかかるだろう。初めから そういう配慮をしていれば不用だった金はだれが払うのかをも含んで、 大きな問題を持つ施設だと思う。

(2001年6月)

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