◆穴針(あなばり)

※ この地図は、国土地理院発行の1/50,000地形図「油木」(昭和40.7)を使用したものである
所在:高梁市備中町平川(びっちゅうちょうひらかわ)
地形図:備中市場/油木
アクセント:アナバリ
形態:川沿いから支流にかけて家屋が集まる
離村の背景:ダム建設
標高:約200〜300m(水面は約230m)
訪問:2013年5月
大字平川の北部、成羽(なりわ)川右岸およびその支流沿いにある。現在は新成羽川ダムの人造湖(備中湖)により一部が水没。成羽川本流沿いの「信(のぶ)」・支流沿いの「穴針」の小集落に細分される。
付近の名木(なぎ)集落で伺った話では、水没前でおよそ10軒。ダム建設に伴い、昭和40年頃に離村。なお水没記念碑によると、丹下5・谷本2・藤井2・井上・豫風各1の計11軒。
訪問は名木より。谷筋の道はかなり荒れているが、はっきりと痕跡をたどることができる。集落付近に到達すると、路傍に多くの古い墓?が集められた一角(写真3)があり、湖面に近づくと渡船の待合所(写真8)、およびこの付近に屋敷跡と墓地(写真11。井上家)が見られた。
資料によると、水没地区の主な生業は稲作・畑作(麦類・豆類・タバコ・蒟蒻等。古くは藍も)・養蚕・林業・漆・漁業等。ただし耕地はきわめて少なく、米が自給できる家は全体で4、5戸程度。多く東城・西山から買い入れていたという。漆(備中漆)は最盛時水没地区の全戸で行っていた。さらに水没直前まで、清川内とともに伝統的な紙漉きが行われていた(清川内和紙)。古くは水没地区全体で行われていたが、水没直前は清川内で5戸、穴針2戸であった。質が強く破れにくいため、評判が良かったという。
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