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◆五瀬(ごせ)



※ この地図は、地理調査所発行の1/50,000地形図「龜山」(昭和27.1)を使用したものである

所在:甲賀市甲賀町南土山(こうかちょうみなみつちやま)
地形図:土山/亀山
形態:川沿いの平坦地に家屋が集まる
標高:約230m
訪問:2020年12月

 

 大字南土山の北西部、田村川(野洲(やす)川支流)の左岸にある
 県道の大山(おおやま)橋付近から当地の神社脇までは車道が通じているが、道幅も狭く状態もあまり良くない。
 最近の地形図でも地名と水田・茶畑の記号が記されているものの、耕作は行われておらず農業関係の小屋が僅かに残るのみ(ただし平成23年の航空写真では、整備された茶畑が数箇所確認できる)。昭和50年の航空写真を頼りに2箇所ほどある建物の場所を探したが、周辺の農地跡は笹や草本が繁茂し道を辿ることにかなり難儀する。いずれも跡地が確認できるのみ。旧版地形図に見られる橋から尾根に上がった辺りでは、五瀬稲荷大明神の跡地が見られた(写真18)。
 ほか集落内では墓地を2箇所確認。一方は神社(後述)へ向かう道と山に沿う道の分岐付近(写真7)、もう一方は集落の北西部(写真26)。前者は時代が古いが、後者は比較的新しく現在でも管理されていることが窺える。ここでは増山氏の名が見られた。さらにこの近くには何かを祀った祠があるが、詳細は不明(写真28)。
 集落南西の山の上には、五瀬一本松神社(五瀬一株松神社)が祀られる(写真32)。以下は境内の「五瀬一株松神社の由緒記」より、神社の概要をまとめたもの。

 祭神は猿田彦命・天照皇大神・大山祇命。
 
もとは御山信仰による一本松神社の分霊を頂き祀ったもの。この地の松の木を御神体とし、弁財天も併せて祀った。
 貞観元(859)年、惟喬親王が五瀬に潜幸。追っ手から逃れて神社の松の木に登ったが、犬に吠えられ気付かれた上に松を伐られて捕らえられたと言われる。それ以来五瀬では犬を飼わず、参拝者も神前に犬を近付けないことになった。また石段を登るときに「切れ物」を持っていると我が身が切られるとの伝承がある。この時伐り倒された御神木の松の一片を御神体と改めた。
 後年徳川家康公により、「一株松大権現」の称号を頂いたという。
 大正9年、行政の指導により、弁財天のみを残し白川神社に合祀(4月5日付)。
 その後崇敬者が一本松大神の御分霊を頂き、再び元の地に小祠を造り一株松之宮として祀った。
 昭和56年、白川神社境内神社五瀬一株松神社として列格されるに至る(12月16日付)。

 また他にも、集落について述べられた「五瀬村の記」の説明板が置かれている。以下はその全文。


 甲賀郡志によると、瑞宝山常明寺は元明天皇の勅願により和銅二年(七〇九年)秋から四か年掛けて和銅五年に七銅伽藍の整った壮大な寺院として五瀬村に建立されたとしている。
 このことから五瀬村は奈良初期にはすでに成り立っていたことになる。その後、五瀬村は平安末期より鎌倉期に掛けて、頓宮村、前野村、野上野村、大沢村、岩室村と共に岩室荘に編入されている。
 鎌倉期に入って常明寺の堂宇は破損が激しくなり、南北朝の初め天平四年(一三四九年)五瀬村は二百七十年間御所村の名を憚り旧称の五瀬村に改めたとされている。
 常明寺第十五世住職は拝僧虚白禅師は文政年間五瀬村に草庵〓芋軒(※)を結んでいるが、その「草庵記」によると、「あら金のつち山なる西に川あり。内の白川と云ふ。川の南に一村あり。五瀬村と呼ぶ。往古は御所村と云ひしとなん。農家二十竈にみたず。増山、富田の二世(表記ママ)の外他姓をまじえず。故ありて公役をゆるさる。木樵を業とし、筏をさして云々。(中略)五瀬一村の産神を一本松明神とあがむ」とある。
五瀬村は明治十二年四月一日より土山村の一大字となる。明治二十年頃は数戸の農家が残っていたが、昭和四十年を境に全くの廃村となる。

 此山の雲となかれし櫻苗 虚白

平成十九年三月吉日

※ 〓は火へんに畏

 なお町史では、天平4(1349)年の常明寺の移設再建の際に当地で官吏が休息したことにちなんで「御所村」と呼んだとある。また旧称の五瀬に改めたのは元和年間(1615-1623)としている。このことは神社の由緒記でも触れられているが、旧称に戻した時代は、やはり元和年間。

 


写真1 農地跡

写真2 道と農地跡

写真3 農地跡の小屋

写真4 溜め池

写真5 神社への分岐

写真6 溜め池

写真7 路傍の墓地

写真8 小屋

写真9 写真8付近の遺構

写真10 写真8付近の農耕機械

写真11 集落北東部の道

写真12 丁字路の石仏

写真13 屋敷跡

写真14 写真13にて

写真15 同。瓦(左)と槽状の遺構(右)

写真16 同。何かの屋根が見える

写真17 小屋

写真18 稲荷大明神の石柱

写真19 道(右)と農地跡(左)

写真20 集落内の道

写真21 農地跡

写真22 瓦

写真23 茶畑跡

写真24 井戸

写真25 井戸?

写真26 墓地

写真27 墓地にて。石仏群

写真28 祠

写真29 手水鉢?(写真28そば)

写真30 注連縄?の巻かれた樹木

写真31 神社参道

写真32 神社社殿

写真33 神社の境内社

写真34 神社裏手の供養塔(左)と遥拝所を示す石塔(右)。後者には「五瀬郷瑞宝山 神佛御璽遥拝所」とある

写真35 集落付近の河原

 

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