◆蛼(こおろぎ)
所在:安曇野市豊科田沢(たざわ)字蛼
大字田沢の北部にある。四賀村【現・松本市】五常(ごじょう)との境界に稜線を越えて突き出た部分があるが、この中に集落があった。 平家が滅びる1年前の寿永3(1184)年、源義経の大軍に敗れた木曽義仲の家来の1人が落ち延び、この地にたどり着いた。道中の疲れがひどく休息していると、辺りにはコオロギの鳴き声が響き渡っていた。これに聞き惚れているうちにしばらく眠ってしまったが、突然鳴き声が止まったことに気付く。すると追っ手が間近に迫っており、すかさず身を潜めてこれをやり過ごした。もう二度と追っ手が来ないと考え、この地に住み着くことに。コオロギのお蔭で命が助かったので、ここを「こおろぎ(蛼)」と名付けた。 2010年5月、付近を訪れた際は遠景を望んだのみであったが、2015年11月改めて現地を訪問。地形図では795mの標高点の南東で道が途切れているが、ここより西側では地辷りの工事により整然とした一画になっている。西へ進み再び山林に入ると車道の続きが現れ、本来は五常の麻生へと通じていたよう。工事跡と元の山林との境目には散乱した生活用品や浴槽(写真3)、倒潰した屋根が見られ、宅地のごく一部が地辷りを免れたものと思われる(ただし浴槽は元からこの位置にあったものではないよう)。
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写真5 集水井の看板。「こおろぎ」の文字が見える |