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◆岩谷(いわや)



※ この地図は、地理調査所発行の1/50,000地形図「荒砥」(昭和22.3)を使用したものである

在:中山町金沢(かねざわ)
地形図:宮宿/荒砥
形態:緩い谷沿いに家屋が集まる
標高:約280m
訪問:2018年11月

 

 大字金沢の西部、鴬沢(最上(もがみ)川支流)の上流部にある
 最近の地図でも地名と複数の建物、寺院・神社の記号が記されている。このうちの「寺院」は「岩谷十八夜観音堂」として現存(写真3)。解説によると、開基は飛鳥時代。承和4(837)年に慈覚大師が再建。古くから眼病の神として信仰を集めていた。江戸時代中期以降は「オナカマ」(※1)の本山として栄えた。
 以下は観音堂敷地前の案内板より、集落や観音堂の概要。


 岩屋地区は「岩谷33軒」と言われ、最盛期には、38戸(257人)の人達が生活をしていたが、昭和38年ごろから離村が進み、昭和55年には最後の家族が岩谷を離れ、今では十八夜観音堂や山ノ神神社だけが鎮座することとなった。岩谷十八夜観音は古くから眼病の神として信仰をあつめ、また「オナカマ」と呼ばれる巫女たちの本山として繁盛してきた。観音堂は江戸期に建立されたとみられ、本堂の中からは本尊といわれる仏像10数体と木彫鬼仮面2面、ほかにたくさんの「オナカマ」の道具類の奉納物が見つかった。「オナカマ」道具であるトドサマ(オシガラミ)やイラタカの数珠、アズサユミ、それに目を描いためずらしい絵馬や、各時代の奉納鏡等は庶民信仰資料として、国の重要有形民俗文化財に指定され、現在、中山町立歴史民俗資料館に収蔵し、一部を展示公開している。
 ここから、北方へ約2qのところに昭和56年から6カ年計画で造成された44.4ヘクタールにも及ぶ広大な「沼の蔵りんご団地」があり、朝日連峰が一望できる。


 神社は既に移転しており、社殿跡には「山神神社跡」の標柱が立てられている(写真12)。神社の脇に後年になって建てられたと思われる管理家屋をはじめ、廃屋や小屋類もいくらか散見される。現在でも耕作されている畑も少々。以下は集落内にある離村記念碑(平成7年、岩谷会による)より。


当地は標高約二八〇米の地で、元豊田村の一字でした。
部落の起りは明確ではないが飛鳥時代といわれ、田畑の耕作や養蚕山林事業等で遥なる歴史を築いて来ました。その間幾多の変遷はあつたが昭和三〇年代の終り頃より始まつた日本の高度経済生長は、非能率的な字の過疎化を急激に押し進め、豊田、長崎両地区の外、寒河江市にも移住し、昭和五十五年には凡そ十三世紀に亘る岩谷の部落は遂に、無人の地となりました。
その間昭和四九年には現在の岩谷会が組織され、年一回の総会が二月頃公民館で、また村社である山の神様の祭礼が、五月の連休に、密教オナカマの十八夜観音の祭礼も八月十八日に、それぞれ催され、親睦を深め今昔の話題等に花を咲かせ旧交の絆を温めあつております。


 屋敷跡の1箇所には石碑と墓が置かれ、碑には以下のような文が刻まれている。


 最上川伝承遺跡 霊地岩谷
 元祖作兵衛生誕之地
 源義家公之重臣鎌倉権五郎景正ノ息権兵衛安倍貞任ノ大群ト岩谷ニ於ケル戦激シク権兵衛ハ戦傷ヲ受ケテコノ地ニ止マリ貞任軍ハ小鳥海山ノ激戦ニテ潰滅義家公ノ大勝利トナリ奥羽ノ地ノ平定成ッタ康平四年(一〇六一)五月権兵衛ノ子作兵衛生レ侍ヲ捨テ農事ニ励ンダ


 また現地を訪れていた方より、テレビドラマ「おしん」で主人公の生家として使用された民家の跡地を教えていただいた(※2)(写真18)。なお出身者ではないとのことで、往時の様子については分からないとのこと。

 なおHEYANEKO氏によると、当地には豊田小学校岩谷冬季分校があったとのこと(昭和48年閉校)。校地の特定はできなかったが、集落内にある絵地図より凡その場所は推定できる(写真14?)。

※1 口寄せを行う巫女の地方名。いわゆる「イタコ」
※2 町観光協会のウェブサイトによると、平成24年積雪により崩壊。翌年県による費用負担で解体し、鶴岡市に移築・復元された

 


写真1 集落北東部、道路沿いの石塔群。右より百万遍・庚申塔、左は判読できず


写真2 集落手前の観音堂案内標識

写真3 観音堂

写真4 観音堂脇の石塔

写真5 観音堂前の広場

写真6 史跡地図

写真7 廃屋

写真8 廃屋

写真9 屋敷跡

写真10 家屋

写真11 神社。石段

写真12 同。社殿跡

写真13 碑

写真14 学校跡?

写真15 平坦地。奥に小屋

写真16 屋敷跡

写真17 古い電柱

写真18 屋敷跡にて。碑と墓が置かれている

写真19 屋敷跡(「おしんの生家」跡)

写真20 屋敷跡?

写真21 小屋

写真22 畑

写真23 倒潰した小屋

写真24 円筒状の遺構

 

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