ひきこもり青年の居場所「ハートツリー」は下屋敷のごく普通の民家にある。お話を伺っていると職業体験を終えた利用者が戻ってきた。「〇〇ちゃん、今日はどうでしたか?」と小気味よく張りのある声をかける。酒井理事長は平成3年に教師生活を定年で終えたのち、朝日ヶ丘の田辺西牟婁教育会館にあった教育相談センターの相談員となる。ちょうどその頃は不登校児の問題が大きくなってきた時で、相談にきた不登校の子どもも義務教育期間を終えてしまえば、進学・就職した子どもを除いて動静がわかりにくくなる。ある意味では「社会的に忘れられた存在。そんな人がいる社会は何かおかしいのでは?」と感じる。もちろん自宅にひきこもって生活している青年を支援する機関はなかった。 |